着物の裏側

 これはずいぶん前の、娘とその仲間たちが主催した「うたかた」という歌と語りと着物のイベントの写真です。今も染の小道という街をあげての着物のイベントに取り組んでいる、新宿の中井での開催でした。

 日本歌曲や民話の語りや着付けパフォーマンスなど、盛りだくさんで取り組んだあの頃が懐かしく思い出されます。(みんな若かった!)

その中で左の女性の紫のきれいな着物、見事に着こなしていますが、この着物には驚かされました。

 これは的屋の娘さんからいただいたものなのですが、状態もいいし汚れもなく皆が綺麗な着物とほめてくださるのですが、なんか普通の着物と違うとずっと思っていました。ある時元呉服屋さんだった方にみてもらいましたら、うっすら笑いながら「これは遊郭のおんなのひとの外出着ですよ」と一言。なんで知っているのかしら、さすが遊び人?と思いながら、それからうちにおいておけないような気がしてきました。これを買った女性はやはりある覚悟を持って着るつもりだったろうし、綺麗だからと言ってちゃらちゃら着られるのは嫌だろうと・・・

 流れ流れてうちに来たのも何かの縁ですが、覚悟持ったある若いお嬢さんが一回着て、今回力をもったこの女性に着てもらえればもう十分ではないかと思い、アンティーク着物のお店のオーナーにひきとっていただきました。着物は感性で買うものだとしたら、次に着る人はその感性や生き様をもある程度引き受けることになります。人様に着物お貸しして着ていただく時には、それを考えなければいけないかと思いますが、上の写真のほかの方が着ているものは、皆着物作りが趣味の方が作って貸して下さったものです。違いがなんとなく分かるような気がします。