マルティン ブーバー Martin Buber

 40年以上前にマックスウェーバーの公開講座に通っていたことがあり、その時イスラエルの哲学者マルティンブーバーのことを知り、「我と汝」とか解らないまま読んだり調べたりして心惹かれてはいましたが、結婚して生活が変わり、長いこと思考も中断していました。

 60歳過ぎて外国人の着物の仕事はじめ、あれよあれよという間に忙しくなりながら、私は何をやっているのだろうかという思いがありました。なぜ、急にこんな場が私に与えられたのだろうかということです。何故沢山の外国人がここまで来てくれるのでしょうか。

 そんな時、日野原重明さんの60歳過ぎの生き方という本を読んでいて、マルティンブーバーが出てきてびっくりしました。ここへきて、つながったのです。

 私の解釈が合っているかどうかはわかりません。でもブーバーの「我と汝」という思想は、言葉も国民性も感情もよくわからないまま四時間を一緒に過ごすゲストとの感覚の共有にピッタリくるし、私の中にあなたの感覚があるということが、自分を知るすべなのではないかと思えています。

今日のゲストはモンゴル、デンマーク、オランダ、ハワイの女の子たちでした。いろんなトラブルがありました。若い年代で不快に思うこととか、許せないと思うことあって当然かと思いますが、その感情ですべてを捨ててしまうことは自分の為にならないし、心の余裕や人とのつながりも全部拒否してしまっているようで、もったいないと感じました。ただ、その感覚私も持っているもので、彼女のように私もしてきたのかもしれない、その顔をゆがめた悲しい姿を歳を重ねてきた私が見ているという事、俯瞰してみえているのです。

 帝釈様の法華経の彫刻のお釈迦様の図、もう何十回もみています。初めて見るゲストたちはお経の説話をここまで微細に彫り込む彫刻師の技術に感動しています。法華経を書写したこともありますが、手塚治虫のブッダという長編漫画を読んで初めてお釈迦様のことがわかりました。日本の漫画やアニメは世界中で読まれているので、日本文化や宗教について、よく理解している外国の方が多いのもわかります。

もう少し、もう少しすると私にとってのこの彫刻の本当の意味が分かる気がします。

 いろんなアクシデントや関係や試練は、もう一つ突き抜けるためのステップだと思っています。