危険な暑さの中で

 私の人生の中で、こんなに働いたことなかったというくらい、仕事しています。先週末は荒川区での子供向けのダンスミュージカルの衣装を作りに日暮里へ二日間通いました。衣装の着物ドレスは重いし、暑いし、場所はちょっと遠いし、足を前に出すと一歩進むと念じながらようよう歩いていきました。

このイベント参加して四回目なのですが、若いダンサーたちが年々成長し表現力が増していく姿に涙したり、そこに子供たちが参加するので、親たちの熱い視線が注がれるし、演出や台本もよくできているなと感心しています。一人の優秀な人間がその地域に存在し様々な行動をおこすことで、考えられないくらいの影響や刺激が与えられるというのは凄いことです。

 私のキモノドレスを着て下さるエミ・エレオノーラさんは知る人ぞ知る歌手で女優なのですが腰の低い方で、私ごときの衣装で満足してくださってます。今回は海の女王という事で、ブルー系の着物や帯揚げ、半幅帯に青いチュールを垂らし、頭はトルコ人の帽子のように高く上げ、いつものようにエミワールドを作り上げました。ラストにはエミさんのアルバムから「群青追分」という歌を歌い、たまたま私が持って行った十二単の十二色をつないだ端切れをマストのように掲げてくれて、嬉しかったです。

ただ、終わって楽屋へ戻ってきたダンサーのお兄さんが、「喪失感!明日からはダンスの仕事はないからアマゾンで働くんだ」といっていたのが印象的でした。

 いつまでゲストが来るかわからないけれど、今のところ私は着物の仕事を続けることが出来ています。相変わらずアクシデントだらけで、娘が送ってくれた素敵なうちわを飾っておいたらあっという間に持っていかれ、めげたりしてますが、帝釈様のお経の彫刻の説明文を読み上げてくれたニューヨークから来た看護婦のアマンダの声を聞きながら、これまでうちに来て着物を着て柴又に来た百人以上の外国人の方々と作り上げた物語は、このお経の彫刻の中にあるものだったのではないか、それをいつか紡ぎ上げて違う作品にしてみたい。危険な暑さの中で、朦朧としながらそんなことを考えています。