フランス人

昨日のゲストはモンサンミッシェルの近くのカーンに住むフランス人の23歳のカップルと、リヨンに住む27歳の女の子、それに小岩に住んでいたという四十代のインドネシアのアルディでした。

30分早く着いたアルディは高円寺で買った甚平風の上着にグレイの女性もののようなハーフスラックスを履き、ヘアは坂本龍一の様で、うん?と一瞬思いましたが、他のゲストが来るまでいろんな話をしていたら、何と彼はカズオイシグロが好きでその繊細で静かな感覚とか映画化された作品の素晴らしさだとか熱く語っていました。イシグロ氏は日本人だけどずっとイギリスに住んでいるので日本語が話せないから、私達は彼の感受性を原文の英語で受け止めなければならず、翻訳された日本語は彼の言葉ではないし、どうもすっきり理解できないのがもどかしくてなりません。

それから元気のいいフランス人たち三人が訪れ、ヘアに苦戦しつつ浴衣着せて何とか帝釈様までたどり着きました。写真を撮られるのがすきな彼らはいたるところで撮り、撮られまくり、混雑している京都や浅草に比べて柴又は人が少なく落ち着いたとても気に入ったとの事でした。

最近暑いせいもあって、山本亭にはいかず、参拝料が四倍になるのですが帝釈様の内殿と庭、回廊、そして沢山の彫刻をおみせしています。素晴らしい十枚の法華経の彫刻板、お経の内容が名彫刻師十人によって彫り込まれています。

外国にはキリスト教の彫刻があるし、アジアにも仏像が沢山あるでしょうが、帝釈様のこの彫刻、他のものとなにか違っている気がしていました。技術を尽くしたたくさんのものがそれぞれの壁面にほりこまれていていますが、あまりに多くてこれは何をあらわしているのか、そこにお釈迦様はいらっしゃるのか一目見てわからないのです。

外国人が来てみんな「スゴイ」というんだけど、何十回と見ている私が、いまだなにがすごいのだか説明できないでいました。

その日はうちのゲストのほかに外国の男性が二人熱心に彫刻を見ていて、どちらからか伺ったらフランスからとのこと、みんなフランス語で何となく挨拶して、私は彼らに質問されることに一生懸命答えていて、フランス人の感覚は少しほかの国の方とは違っているとずっと思っていたのですが、今まで考えなかったようなことを彼らと話していることに気が付きました。

それはこの彫刻板作ったのは彫刻師であり、職人さんcraftmanで、技術を尽くした職人魂が人の心を打つのではないか、仏教の教えとかお釈迦様の教えとかが醸し出すものではないのではないかいうことです。見解の相違、感覚の違いは外国人間でもあたりまえだし、これは私の思っていることとして、はっきり言えるようになりました。ただでさえ人と違って変わってると言われてきたことが、最近強みになってきています。

ちゃんと英語で伝えられたのかあまり記憶ないんだけれど、彼らと短い時間必死で話していた時、何かのゾーンに入っていた気がします。日本人同士の会話では味わったことのない感覚、異国人と互いに違う言語を使い、違う気持ちを話す、考えの塊に何とか近づこうとして、届かないんだけどわかっているという気持ちだけはあるよううな・・・

うちのゲストの写真撮らなきゃいけないので、何となく別れましたが、帰りがけ回廊の向こうから彼らに「ありがとう」といわれ、私はゲストたちと一緒に「Au revoir!」と答えました。

今日はフランスデイでした。後でゲストたちがフランス語の長いレヴューを書いてくれました。何となくわかるとこもありますが、発音が難しい。フランス語のラジオ講座を聞きましょう。