今まで経験したことがないような台風の後で

 昨日は本当に強い雨風の台風で、夜中に家が風で揺れるのを感じ怖くなりました。だんだん自然の脅威がエスカレートしてきている気がします。

 そして今日は台風一過で暑さがぶり返し、十月に入って袷の季節なのにゆかたに襟を付けて着せる用意をしていたら、今日のゲストのアルゼンチンのママと娘さんのソフィアは何となく不満そうでどうしようと思いましたが、気温は31度だし体重も100㌔だったりするので、ママには黄緑の総絞りの浴衣を、ソフィアには紫の浴衣を着せました。仲のいい親子でヘアも二人であれこれかんざしを試し、ママは五つ位付けてしまいましたがとても似合い、喜色満面で旦那様のカメラに収まりました。ソフィアの彼氏は小柄で頭一つ分彼女より小さいのですがとても感じの良い男性で、スペイン語の単語が出てこないとComo se dice 何々en espanol?(スペイン語で何というの?)と私は彼に聞きっぱなしでした。紫って?トンボは?ピンクは?扇子は?彼は生きた辞書です。

 合気道をやっているパパは四時半に道場へ行くというので急いで柴又へ行き帝釈天のお庭も早く回ろうと思ったら、とても庭が気に入りたくさん写真撮り、彫刻ブースも早めに通過しようとしたら、パパとママは感動してずーっと立ち止まって見ていて語り合っているし、若い二人もとても気に入っていくらでもとどまっていられそうでした。時間が迫ってきたのでパパのとこ行って感想聞いたら、神道と仏教とキリスト教とタオイズムについて語りだし、よくわからないけど合気道はタオイズムとつながっているのかと思ったのですが、とうとう老子にまで行きつきました。

 物事の本質は「虚」のうちにしかない。虚はすべてを受け入れることができ、それゆえに万能である。自分を空っぽにして、他人が自由に出入りできるようにした者は、どんな状況でも支配するようになる。このような「虚」の思想は、日本の剣道や格闘技にまで大きな影響を及ぼすことになる。柔術では無抵抗、すなわち「虚」によって敵の力を消耗させ、自分の力を温存しておいて勝利をおさめようとするのである。

 風にたなびく旗を動かしているものは風か、旗か。

 いや動いているものは風でも旗でもない。心の中にある何かだ。

 心は深い器のようなもの。

 宇宙はあるがままで完璧なんだという、平和で澄み切った気持ち。老子が名づけようのないもの」と呼んだ、やわらかで形のないもの。

このファミリーと一緒にいていつもは感じない深い穏やかさを感じたのは、こういう思想を知っている人たちだからだったのでしょうか。

 

 絞りの浴衣を豪華に着たママは、三回ぐらい中高年の男性に声かけられていました。「It,s fine!」いくつになってもナンパ?は嬉しいものです。帰ってティーセレモニーして着替えて、猛烈にママとソフィアとハグして、今日一日終わりました。毎度のことながら、よくここまで持ち込めたと思います。着せられないんじゃないか、気に入らないんじゃないかと途中で思うことも度々だし、今日もソフィアの襟は浮いてしまい綺麗に行かなかったのですが、ママもソフィアも彼氏もパパも輝いた顔をしてくれました。

 次はもっともっとうまくできますように。