本当の愛

 二日間続けて続けてヨーロッパのお客様がいらしています。昨日はスペインマジョルカ島からの姉弟、今日はパリで働くイタリア青年とロンドンに住むマレーシアの女性の新婚カップルでした。秋たけなわになったのでしっかり訪問着をお着せしたのですが、スペインのお姉さんが歩いていて突然「みんな私を見ないの」と言い出し、あれ、ずっと前にそうやって嘆いたチリの女性がいたこと思い出しました。女心は複雑です。でも着物をよく着る日本人でも今日はみんなによく見られたと思う時とそうでない時があるというから、あまり気にしないでくださいな。きれいなのは変わりないのですから。

 恋人や夫婦で来るカップルが多い中で、姉弟というのは初めてだし、弟君は彫りの深い長身のイケメンで、お姉ちゃんとのツーショットでははじけないけれど、一人で庭園見ている姿とかたくさん写真を撮って後で見ると、とてもカッコいいし、憂いに沈んだ目が何とも言えず甘いのです。これはモデル向きの男の子だなと思いながら、お姉ちゃんも一人の写真をたくさん取り、こちらも落ち着いたスペイン美女の正統訪問着姿で、絶品でした。姉弟二人の旅では互いに撮らないであろう写真を私はたくさん撮り、スペインに帰って家族に写真を見せたらとても喜んでくれたとお姉ちゃんが知らせてくれて、本当によかったとほっとしています。

 

 今日のイタリア・マレーシアの新婚カップルは高砂でも柴又でもなんだか良く目立ちました。淡いブルーの目をした彼は静かで人懐っこいタイプで株の話、経済の話、日本に来る前に旅行していたドバイの話、仏教の話、カトリックとキリストの話とか結構突っ込んでいろいろ話しました。わかりやすい英語だけど宗教的な考え方とか、イエスキリストの存在とは何かとか話していると、宗教観はしっかり自分のものにしていないととても太刀打ちできません。前にロンドンから来た夫婦とこういう話延々としたことがあって、あとからきたレビューに実はあの時とても空腹だったと書かれて、今回ももしかしてと思ったら案の定空腹で、すぐ参道のお店に連れていったらお団子とカツカレー、かつ丼をあっという間に平らげてしまいました。

 彼らは新婚ラブラブオーラが出ているせいか結構参道でも声をかけられてましたが、雨が降ってきたので銀座のくのやの素敵な傘をさしてもらい、相合い傘で彼が彼女の肩に手をまわして歩いたら、周りにいた日本人たちが「ヒューヒュー」と声かけざわめきだして私はなんだかおかしくなりました。物凄く絵になっていたようです。でも今どき日本人カップルはこんなことしませんよね。

 彼女に彼のどこが好きかと聞いたら、「calmな所」だそうで、平穏、平静、穏やか。確かにそうです。彼は20代の時一年間修道院にいたとのこと、だからいろいろ考えるんでしょう。

 うちに来るゲストは男性が白人で女性がアジア人というカップルが多い話をしたら、異文化同士で感情にワンクッション置ける方が良いとの事、それでもぶつかる時はぶつかるけど、彼にとっては欧米の女性は強い!そうです。ここのところ新婚カップルが多いのですが、外国の方は何となく日本人より精神的に成熟していて大人っぽい気がします。だって六十過ぎた私と対等に愛について語り合っちゃうんですから。でもこの年だから本当の愛がそのカップルにあるかどうかわかります。うわべだけだけでなく心からの愛をうちの着物たちはそっと支えています。