感性が勝負

 日経新聞に載っていた日立製作所の東原敏昭社長のインタビューの中で「製造業はなくなる」という文章が気になった。

製造業で国を大きくした日本だが、人口減やグローバル化に加え、デジタル技術の進展で製造業のあり方が大きく変わりつつあるという。

 まず大量生産を前提とする工場の価値が減るというのは、膨大な生産データをビッグデータ解析し人工知能(AI)で分析すれば、製造過程の不具合や生産ロスを効率的に減らせるが、工場の品質が均一化する可能性を秘めるし、デジタル化はそこに付加価値を見出すことを難しくする。しかしあらゆるデータが瞬時に集まる時代、生産、調達、物流、マーケティング、販売は一体になってやらなければならくなってきているそうだ。

 ただ、AIが担えないのは社会のニーズをくみ取る共感力、問題解決のために何が必要かを探る提案力であり、感性である。人の幸せとは何か。その実現にどのような価値を創造すべきか。歴史や文化芸術などを幅広く学び、感性を磨くことが何よりも大事になる。そして異なる感性を持つ海外人材と一緒にAIを使えるようになることが必要になってくると語っている。

 

 感性を磨き、AIを「使う」こと。人間にはこれまで以上に感性が求められるということ。

 

 日本人に着物きせるのと外国人に着物着せるのでは違うし反応も全く異なるが、着せる私の感性もずいぶん問われる。さっさと着物や小物の色を合わせて組み合わせるゲストも要れば、長考でいつまでも決まらず、相手をしてくれている夫が音をあげることもある。

 今までは色や柄で選ぶことがほとんどだったが、ここへきてたくさんの素晴らしい紬をいただき、これをどう生かそうかと呉服屋さんと相談しているが、汚れのひどい夏物の結城紬は色をかけて染め直し男物にしたらという提案を受けた。男物の結城の夏物なんて聞いたことないし、すごすぎる。できるだけ大きく仕立てて、外国人に着せようと思う。

 イギリスのフィルム会社のプロデューサーから撮影に使う着物のレンタルの依頼、着付け習得の依頼がきた。皆目見当のつかない世界なので娘に助けてもらうが、”箱根の紅葉の中”で、とか、”ホテルの中で”とかあって、よくわからない。でも結局助けてくれるのは、たくさんの着物たちだ。何が起こるかわからない時代、今ある縁を大事に広げていって、大いなるものに捧げていければいいんだろう。

 七五三の依頼と成人式の下見に来る方もいる。粗相がないようにしっかり身を引き締めてやっていこう。