まんぷく

安藤サクラさんが好きで、たまにテレビ小説まんぷくを見ているが、今昼の再放送を見ていて敗戦後の食糧難で大事にしていた着物を闇市で売るというシーンがあった。大柄の模様の結城紬を百円と言われ激怒していた母親が、知り合いにあって三百円で買ってもらい、それを三倍の九百円で売ると聞いてみんなでびっくりしている。

 

戦後の貨幣価値がわからないんだけど、ちょっと待ってください。今私は二十枚くらい結城紬を持っているんです。なんでこんなにうちに高価な着物があるんでしょう。戦後の闇市でもないのに、ものの価値が混乱しています。私がこれらをほかすことだってしまい込むことだってできる。生殺与奪という言葉ここで使っていいのかわからないけど。

 

私はどうすればいいんだろう。羽織は二枚パリに渡った。信頼できるフランスの新婚夫婦が大事に着てくれるだろう。今回うちに来た着物たち、初めは様子見ながら衣紋掛にかけて見ていたが、羽織ってみて、うちで着て見て、柴又に着ていって、だんだん慣れてくると突然いろんな話をしだす。どんだけいろいろな経験してきたんだろう。私など想像できないようなところにいたんだろう。

 だいぶ汚れたものもあるけどまだみんな生きている。生きて息をして人間のぬくもりを探している。だってそのために存在しているんだから。私のところに逃げ込んできたたくさんの着物たち。外国の方に着てもらおう。外国に連れていこう。品格を持った方に着てもらおう。

帝釈様で結城紬きていたら、遠くから見ていた馴染みのおじさまが、いい着物だねえとつくづくいっていた。私ごときが着ても素晴らしく見えるのだから、どなたが着ても大丈夫。素晴らしい着物は一人が所有するものでなく、一期一会で着てもらえる人を探し、幸せになってもらわなきゃいけない。楽しい、嬉しい使命である。

次回のゲストはルーマニアのブカレストから来る。198㎝の偉丈夫。ルーマニア。確か体操のコマネチの国だったような。