いつも何度でも

 ゲストの希望で臨時に木曜日の二時から六時に体験をする予定でいたら、直前に一時から五時でという違う予約も入り、ではこちらは時間差で着付けてお茶体験も先にやればなんとかなると思ってやっていましたが、二時からのゲストがなかなか来なくて、先に来た新婚のヤングカップルはとても待たしてしまい申し訳なかったのです。でもオーストラリアで日本車のスポーツカーのセールスをやっているベトナム人の彼は若いけれど落ち着いて柔らかいタイプで、おくれてきたルーマニアのフィナンシャルカンパニーの33歳の社長と明るく話し込み、カンボジア人の超小柄なメイクアップの仕事をしている奥さんは銀行に勤めている34歳の綺麗なルーマニアの彼女のヘアメイクを手伝ってくれたりして本当に助かりました。最近思うのはアジア人は臨機応変というか、なじむのがしなやかということです。欧米の旦那さんにアジア系の奥さんという組み合わせがうちの場合かなり多いのです。

 さてこの日の男性二人は186㎝と194㎝、百キロ越えの髭もじゃで服装もあまりかまわないタイプのルーマニアの社長は、お守りも何個も買うしアイスクリームご馳走した時も五千円札出してくるし、宿泊は品川プリンスホテルだというし、リッチマン?です。

 ただ厳しいビジネスの世界に生きているからなのか性格なのか、いろんなことでの質問の突っ込みが厳しくてわかるまで聞いてくるし、今までで外国人の中で話して詰まった場面が一番多かった気がします。ルーマニアはドラキュラの国だと来た時の挨拶で言ってましたが、来日は十回目、みずほ銀行とか矢崎とかと取引があるみたいで、今回もビジネスもあるようですが一緒に来たガールフレンドを喜ばせようと着物体験を申し込んだといってました。

 疑問に思うことは何でも問いかけてくるので必死に答えてきましたが、帝釈様の蓮華経のお経の彫刻版のところで、常不軽菩薩について聞かれた時は完全に詰まりました。私は妙法蓮華経は全部読み込み、書写し、日本語で聞かれればある程度答えられますが、これを彼のような論客に納得できるように英語で説明するのはまだできません。多分百回くらいここには来ているのですが、アバウトな説明しかしてこないし、いろいろな宗教観を話し合ったりはしてきましたが、蓮華経の内容について問いかけてきたのは20歳のスイスの女の子以来二人目です。心から納得していないことは英語でも何語でも説明はできないのですが、いやはや難しい・・彫刻版のそばにある英語の説明を写してじっくり検討します。