眼福

 一週間予約が入らなかったので、昨日は久しぶりの柴又行きでした。中国の若い女性二人とアメリカに住む韓国と香港の女性で、三人が仙台や東京で勉強したことがあり、丁寧な日本語を話すのです。歴史好きな一人は信長や秀吉が大好きでマニアックな年号の質問を日本語で繰り出し、数字に弱い私はアタフタしてました。

 ようやく四人着物着せてヘアメイクして柴又繰り出しましたがさあびっくり、道行く人やお店で話し込んでいる人達が思わず振り返って「綺麗ですねえ」「素晴らしい」と声をかけて下さるのです。谷崎潤一郎の小説細雪で四人姉妹が着物着て花見見物行くシーンが大好きで、四人揃うと細雪できる!と私は嬉しいのですが、今日は予想以上の反響でした。

 実は四人着付けしてヘアもやり、一週間のお休みもあったせいか感覚がつかめず細かいミスが多々あるし、髪の毛が多くてストレートの長い髪に苦戦し、ようやくアップにしたもののルーズでいつ落ちるかと思う出来のもあったのですが、かえってってそれが色っぽくて、若いけど地味目の着物着たその彼女は夫曰く「小料理屋の女将さんみたいだ」そうで、四人ともそれぞれの個性に合った着物姿にはなりました。私は冷や汗ものでしたがこの四人が歩いていて醸し出す雰囲気が見ている方々にああ綺麗だと心から思ってもらえる、眼福を得るという言葉がありますが、杖をついてゆっくり歩いていた男性がふっと彼女たちを見て立ち止まって「ああ綺麗だ」と言ってうれしそうにしばらく見ていて下さった、幸せな気持ちになって下さったことがすごいなあと思えるのです。

 アジア系の四人はどちらかというと地味な目立たないタイプでお化粧も控えめだしヘアメイクもロングで垂らしたり短い髪を結んでお花一つつけただけだったのですが、四人揃った時の着物の調和と人間性と気持ちが見事にそろったのかもしれません。

 帝釈天の本堂にお詣りに入った時、そこにいらした僧侶の方が思わず「綺麗ですね」と声をかけて下さいました。百回以上ここに通っていますが、はじめてでした。

 ほんのひと時の着物体験が、本人たちだけでなく周りの人たちまで幸せな嬉しい気持ちにさせてしまう、私が自分の着物を着て歩いたとしてもそんなことはありません。お釈迦様の彫刻ゾーンみんなで見ながら歩いていて、ふと私たちが見ているのではなく、お釈迦様が私たちを見ているのだと思いました。凄いコース!です。いつも見守っていただき、ありがとうございます。