第二章

 パソコンが故障して一週間使えなくて何とかスマホで凌いでいたが、結構色々使えるのにびっくり、若者のパソコン離れが進んでいるのはこのせいなのかと感心していたが、昨日新しいパソコンが入って業者の方と話していたら会社に入った新入社員がワードもエクセルもできず再教育していると聞いた。文明というのはいいんだか悪いんだかわからないけど悪い方向に向かっているんだろう、たぶん。還暦迎えてパソコンはじめ、教室に二年通いワードの試験受けホームページの作り方まで習っておいて本当に良かったと思う。

 いつ動かなくなるかわからない古いパソコンを整理しながら新しいパソコンへ移行する作業はエアビーの仕事の振り返りと再構築にうってつけであり、この時期に故障したのも故あることなのだろう。一つの時代が終わりを迎える時、知性を司る女神ミネルバは、化身のフクロウを空に放つ。その時代を俯瞰し、歴史の総括から得た教訓を時代に伝えるためだという。

 <ミネルバのフクロウは黄昏に飛びたつ>ヘーゲルのこの一節を読むたび、私は千と千尋の神隠しの映画の中で夜明けに”湯バーバ”が鳥に変身して偵察に飛んでいくシーンを思い出す。呑気に惰眠をむさぼっている暇はない。女子フィギアスケート紀平梨花選手が遊んでいる暇はないと世界一を狙うため通信制の高校を選びすべてをスケートにかけると宣言しているが、若干16才でも時代の終焉が近いことを本能的に察知していて、自分の中に取り込めるものを今この時に必死で取り込んでいるのだろう。悠長なことを言っている暇はないのだ。老いも若きも終わる時は一緒に終わるのであれば、そしてその時が近づきつつあるのならば、自分の中に確実な軸と理念と何らかの技術を確立しておかなければならないと切実に思っている。

エアビーの予約も12月は後半にちらほら入っているだけで途絶えてきた。怒涛の様な10カ月が終わって、来年は次の章が始まる。

第二章。

まるで小説のようではないか。

Chapter Ⅱ

どんな言葉から始まるのだろうか。