日日是好日 にちにちこれこうじつ

 若い頃北千住でお茶を習っていましたが結婚して四十年空白があり、そして二年前ご縁がありまた再開してお稽古をしています。ところがこれがきつくて、毎回叱られてばかり、片時も気が抜けずこんなにお茶の稽古が辛いとは想像していませんでした。

 辛いと思いつつ、ハードなお稽古は続き、覚えなければならない新しいことばかりどんどんふえてパニックになりかけていた頃、樹木希林さん主演のお茶の映画「日々是好日」が公開され、原作本も書店に並んでいたので買って、久しぶりに昨日読み返しました。心がほっこりし、こんなにお茶って安らぐものだったんだと思い出しましたが、今のハードさは40年のブランクを埋めるために必要なのかもしれません。

  昨日のゲストはタイの若い女医さんでした。六回目の訪日だそうでで、来年の結婚を控え忙しい中ちょっとほっこりしたくて一人で5日間東京にいるとのこと、今日来るはずのアメリカのゲストが風邪ひいて来られなくなったため、オンリーワンでお色直しありの着物体験になりました。

 あたりまえだけど優秀で品があり、温かく思いやりのある彼女の英語はとてもわかりやすく、二人で穏やかな柴又をゆっくりと楽しみました。

私の英語力が上がったわけでもないのですが、彼女の感情が予測できるというか方向がある程度一緒なので、わからない会話になっても言葉を置いていけるのです。

 今までいろんなゲストと過ごし様々な時間を共有してきました。照る日曇る日雨の日雪の日、着物着せて柴又散策してお団子食べてお茶体験して、冬の雪の寒さ、春の桜、夏の暑さとセミの声、秋の紅葉、を私は巡りました。いろんなことあったけど日日是好日、精一杯それぞれの日々をいとおしんできました。

 タイの女医さんの彼女はお茶を後で点ててもらうと言っておいたので私のお点前を真剣に見ていて、すらすらとおいしくお茶を点てることができました。なんでも隙なくできる、だから外科医さんなんでしょう。なんでもできない人もいます、私みたいに。お茶の先生になんでこれができないのと叩かれて、それでもすらすらできない、そんな人もいるのです。

 日本の方に着物をお着せし、日本の方たちと茶道をする、そこから一歩離れて、外国の方々に着物をお着せしお茶を点てて飲んでいただく、狭い狭い空間にずっと暮らし、制限されて暮らしてきた私が突然異次元の世界に進み始めています。外国の方がみんな好きな宮崎ジブリの「天空の城ラピュタ」の飛行石が指し示す光の方向が見えている気がします。

 行けるところまで行ってみましょう、うちに来てくれた450人のゲストを思い出しながら新しいやり方を考えています。