小宮康助さんの羽織と 小宮康孝さんの着物

 この間柴又の方からたくさん着物をいただき、紬や小紋など貴重な着物多かったのですが、愛用してらした名残りが結構残っていて呉服屋さんに相談したら、これだけの品をいただいたからにはきちんと手入れして使っていく義務があるといわれ十枚ほどお預けしました。

 おととい小紋が綺麗になって帰って来て、トーンの似ている羽織と合わせてみて、裏についている作者の名前見てびっくりしました。

羽織は小宮康助、着物は小宮康孝、江戸小紋の第一人者の親子です。どんだけの値段だったのか、でも着てしまえばどんなに素晴らしくても査定はできず、だから皆さん困って、私の家へ送って下さるのです。でも残念ながら私には着こなせない、ちょっと粋なシュッとした着物。

 今年の四月に着物体験に来た女性から来年の四月にまた着物が着たいとメールが来ました。やっぱりみな、春がいいのかしら。この前来たスペインの女性は燕の模様の紬を選んだのですから、小宮親子の江戸小紋もよく似合いそうな外国人がいらっしゃるかもしれません。リピーターでしたら振袖や留袖、袴にも挑戦してほしいと思います。

 今フランスでは大規模のデモの影響で、破壊や略奪が横行している様子をニュースで見て、心配しています。いろんな問題がここへきて一挙に爆発しているのか、移民問題、経済問題、環境問題、でもそれはきっかけにすぎず、一番根底にあるのは人間の心なのかもしれません。

 柴又帝釈天のお寺の彫刻を見た時のゲストの反応は様々ですが、おととい来たタイの男性はその精緻さにかなり感動したようでした。日本人の技術に対するあくなき向上心というのは国民性もあるのかもしれませんが、「すごい!」ものです。突き詰めた技術が感動を呼ぶ、そのための準備、思考、平常心。今朝スケートの紀平選手の演技見てて思ったのですが、16歳の若さで自分が今何をしなければならないのかを知っている強さ、トクタミシェワというロシアの選手は怪我を乗り越え技術を磨き自分の色っぽい特性を素直に出して楽しそうに演技している、表現というのはそれが好きだということがまず一番だという気がします。大谷翔平選手も野球以外のことは興味がない、困難があっても高みを目指し続けるエネルギーを持ち続けられるのはしあわせです。 

 江戸小紋作り続けた小宮さんたちも柴又の彫刻師たちも、どれだけのエネルギ―をもっていたことか、その波動が見る人たちに感動をあたえているとしたら、破壊を続ける人間たちの行動も再生と創造を目指す人々の反発の原動力になると信じていきたいものです。

 私には創造したり表現できる力はありません、でも着物を着てもらって、帝釈天の彫刻の前までお連れすることはできる。

 次女の振袖着て参道を歩きみんなに「綺麗ね」と声かけられたメキシコの一人旅の女の子は、彫刻を見ながら感動して泣いていました。アートが好きといってたけど、何かを創り出していくのかもしれません。きっかけと結びつき。多分それが私の役割です。