一山越えて

 いろんな出来ことが日替わりで起こる中で、このところずっと一番気になっていたゲスト、インドネシアの家族六人(男四人女二人)が昨日来ました。170~179センチの男物四枚の用意をして下駄、足袋と揃え、どうやったらスムーズに着付けできるかシュミレーションして考え、あと二人オランダからの女性のゲストも来るので柴又からの強力な助っ人も頼んでお待ちしていました。

 待たされてばかりいたとか、つまらないとか、価格に値しないとか書かれた後なので、この大人数をどうやって満足してもらう体験に持ち込むか悩み、いっそ男性多いから焼き鳥にビールとかの方向にもっていこうかと思っていた矢先、団体様到着しました。予約してくれた女の子は少し遅れるとの連絡あったので、パパママと三人の息子君たちなのですが、明るいパパママに比べ息子さんたちうーんなんか違う、お仕事は?無職、彼女は?いない、えー着物着てくれるかしらと思いつつ、デニム着物も混ぜて四人なんとか着せ終わり、ママとオランダの女性二人もブルー系の訪問着を綺麗に着たところで、まだ最後の娘さんが現れず、男性陣をなんとかしなければとお茶体験に持ち込みました。意外に男性はお点前好きなので、私が点てて四人抹茶飲んでからパパに点ててもらってママが飲み、息子君たちの点てたお茶をオランダ女性に飲んでもらったりして緊張が続くように仕組んで体験してもらい、そのあとやっと到着した娘さんにママが選んだピンクのバラの中振袖を着せ何とか総勢九名柴又へ出発いたしました。そんなに兄弟仲が良いわけでもないし家族で旅行するのも大変だろうと思いながら、娘さんになんで私の体験選んだか聞いたらレビューの内容を見てだと言われ、もしかして何か望んでうちに来ているのかもしれないとふと思いました。

 自慢じゃありませんが家庭のぎくしゃくも、感情のもつれも複雑さにも慣れております。みんなに話しかけかまいながらいつものコースをたどりますが、屈託ないオランダのおばさまたちの明るいテンションは変わらず、でもインドネシアの家族とは話していないことに後で気づきました。いままであったいろんなパターンを思い出しながら、八人の周りをぐるぐる歩いて隣に来た人といろいろ話しソフトクリーム食べ団子食べお土産買い、でもやっぱり八人いるとこんがらがってきます。うちに帰りつきこれでよかったのかしらと思いながらたくさんある普段着の着物選んでもらってプレゼントしたらすごくびっくりされ喜んでくれたので、これで何とかなったかなと少し安心しましたが、オランダのおば様たちとは熱いハグして別れたけどインドネシアさんとはそこまでできず、でも人の好さそうなパパは最後までニコニコ笑っていました。

 夜に来たレビューに、体験にくるのがかなり遅くなり、なんて自分は悪いゲストだったろうと嘆く女の子の気持ちにびっくり、そういえば民泊のサイトではホストがゲストについて語るレビューがあったのです。日本だと圧倒的にホスト側が悪くなるけど、外国というのはフィフティフィフティなのかしらと思うけれど、男兄弟三人の中の女の子一人だからいろいろ考えたり感じたり大変だったなあと何となくおどおどしている彼女が不憫でした。今回は着付けは全部お任せしてきれいに着せていただいたのですが、いつも探り入れつついろいろ聞きながら着せて情報収集してるので、ちょっと寂しかったけど、こんなにスムーズにできたのは助っ人の方のおかげです。

 みんな帰ってから反省会。これでよかったのかしら。あの三人の男の子、大丈夫かな、あしたはディズニーランド行くと言ってたけど、楽しんでください。

 私は彼らに何を残しただろう。ふと、「花は咲く」という歌の歌詞が心に浮かびました。遠いインドネシアからわざわざこんな辺鄙なところまで家族そろってきてくれた皆さん。私の一期一会は本当にグローバルです。