コンマリと精神的癒し

 今アメリカでは、日本のアニメや漫画よりも片付けコンサルタントの近藤麻理恵さん”コンマリ”が人気だそうで、不用品を捨て片付けに夢中になるアメリカ人が増えて、リサイクルショップには寄付品が殺到していると言います。北米3300店のネットワークを持つNPOグッドウィルには断捨離された大量の服が集まり、それを地域内の倉庫に送って選別し、店頭販売やアマゾンなどに出品するそうで、物が必要な人と物を減らしたい人をつなぎ、その媒介として職のない人に雇用を与えるという事を1902年にボストンである牧師さんが始めたものです。扱っているのは大量生産された商品ではなく世界に一つだけのものだし、自分ではない人が、知らない場所で、異なる時間に大事にしていた特別な商品がミレニアル(2000年以降に成人になった世代)やそれ以降のZ世代を魅了していると言います。

 それだったら、うちに大量に送られてきた着物たちもそうなのです。汚した着物をお手入れに出して取りに行った呉服屋さんで、大量の良い着物たちを私が無償でいただいているという事を理解できないと言われ、それを外国人に着せているという事も腑に落ちないようで、あまり不思議がられると私のやっていることはやはり変なのかしらと思ってしまいます。

 コンマリさんは処分するものに感謝し、片付けの前に正座して背筋を伸ばし瞑想のような時間を過ごすそうですがそういうのも東洋の神秘性としてアメリカ人の心をひきつけるようです。

 そういえば横須賀の海軍兵夫婦が車で体験に来たとき、旦那さんが茶道体験にいたく感動したと奥さんのレビューにありましたが、正座して手を両ひざの上に置き、いろいろなお点前の動作する前に「構えて」と私が言ってしばらく静止するとき、皆さんの背筋が伸びて無心の状態になるのがいつも素晴らしいと思うのです。正式のお茶室でなくても見立て尽くしの立礼でもお茶の精神は感じ取れるものです。ストレスだらけの社会において「生きがい」「精神的な魅力をもつもの」をみいだすことによって癒しを感じることが求められているのかもしれません。

 柴又の方からいただいた紺の紬二枚のお手入れができました。初夏にこれを涼し気に着て癒される外国の方がいらっしゃるかもしれません。紬の肌触り、風合い、着心地、日本人が味わおうとしないのなら、外国の方に着てもらいましょう、そういえばギリシアからの初めてのお客様がいらっしゃるのでした。楽しみです。