お茶会の亭主役

 昨日茶道教室でお稽古を兼ねたお茶事があり、若輩者の私が後半亭主となってお濃茶とお薄のお点前をして皆さまをもてなすという役を仰せつかりました。難しいし面倒な細かいこと沢山覚えなくてはならないし、うちの待合室に簡単なしつらえをして、毎日必死で通し稽古しましたが、昨日食べたものさえ思い出せない私の脳みそはうまく反応してくれず、前日もずっとランスルーを繰り返しました。そして当日、もうどうにでもなれとやりましたらなんとかでき、いろいろミスはありましたがお濃茶も美味しかったと言っていただけてほっとしました。いやだいやだと言いつつ、何かをやるという事はいくつになっても必要だし、体が覚えるという感覚、久しぶりに思い出しました。

 お茶入れを包むお仕覆という裂地の名称を覚えていたら前に着物の勉強してた時のノートに緞子や金襴の種類の覚書が書いてあって、お茶も勿論着物とつながっているし、今までやってきたことがずっとつながっているんだと改めて実感しています。

 月曜日に来た三人のゲスト、ブラジルからの新婚カップル、韓国の女性、それにイギリスからフラワーアレンジメントやっている若い女の子でしたがみなユニークで柴又散策を楽しみ、参道で日本酒アイス、桜味アイス、ゴマアイスを食べながら(初対面なのにアイスを回し食べしてました)みんなでしゃべくりまくっていて、私は少し楽でした。

 イギリスの女の子は三か月日本にいて屋久島や那智などいろいろなところをめぐりながらフラワーアレンジメントのインスピレーションを得ようとしているそうで、那智で買ったご朱印帳が木地でできていて、靖国神社や伏見稲荷などたくさん書かれてありましたが、帝釈様のご朱印帳を書く女性が、墨が染みにくいから長い時間乾かしてくださいと言っていて、ブラジルの女の子がそれは何かと聞くから、イギリスの女の子に全部答えてもらいました。龍の彫刻見ていた時も「阿吽あうん」の話したらイギリスの女の子は違う解釈のことを言うので誰に聞いたの?と問うたらあるアメリカ人が言っていたけど確かかどうかわからないと笑っていました。

 いろんなとこ歩き回っている彼女は柴又をどう思ったのかと気にしていましたが、先ほど来たレヴューを読んだら、アメイジング!素晴らしかった!そして私たちの英語がExellentだと書いてあり、びっくりしました。帝釈様で流暢にフランス語話して案内している男性と会った後だし、私たちは中学英語しか話していないといつも思っているのですが、という事は三か月日本にいて各地回っていても日本人ととことん話すことはなかったのでしょうか。

 今私の肩書を作らなければならないのですが、日本文化の紹介という範疇では収まらないし、日本の伝統も知識も問題意識も外国人のほうが持っている場合もあります。反対に彼らから教わることのなんと多いことか。

 イギリスの女の子のフラワーアレンジメントの作品を見てみたい、イギリスの彼女のおうちのお庭を見てみたい。お茶事で床の間に茶花を生けたのですが竹一重切花入れというのに初めて花を入れ、早速入れ方が違うと叱られ、そうやって覚えていくのですが、そういう日本の伝統も私は今知ったわけで、叱られても嫌味言われても必死で食らいついていかなければ日本の伝統文化は身につかないということなのでしょう。そして今得た知識を外国人に紹介することができるのです。

 しかしこのイギリスの女の子には本当にインスパイアされました。強い刺激や影響を受けたし、彼女のまなざしの強さに圧倒されました。赤い着物着せましたが後で写真見たら帯の位置が高すぎた、着物を短く着せすぎた、など多々着付けの失点があり反省していますが、今回ブラジル、韓国、そしてイギリスのゲストと過ごした爽やかな時間はかけがえのないものでした。多分こういうことをするという事を肩書にすればいいのでしょう。それこそ茶事の亭主です。

 困難の後は必ず得るものがある。つくづく思い知らされました。お茶を続けましょう。