令和の初めに

 長い連休がやっと終わりました。混雑した柴又に二回行きましたがご朱印帳に記帳してもらうための長蛇の列にびっくり、写真もゆっくり取れないかと心配しましたが、意外と庭園や彫刻ゾーンはすいていて、柴又の方からいただいた結城紬を染め直し男物に仕立てた素敵なブルーの単衣を着たパリからのゲスト、カールと、ベルギーから来た友達のベロニカは、初夏を思わせる日差しの中、新緑の庭園をバックに写真をエンドレスに撮り続けていました。彼らは柴又のすべてが気に入り、もう一度来たいとのこと、お寺も彫刻も参道もお店も食べ物もすべてがよかったそうです。シニカルなベロニカはたまに痛烈な言葉を発し、初めは「うーっ」と思ったけれどそのうち慣れてきて、参道で売っているワサビ味の柿の種のようでだんだんその刺激が癖になってきておかしくなりました。ダルマを見ながら「あなたの願い事は?」と聞いたら、今の嫌な仕事を辞めて健康で暮らすことだそうですが、友達のカールと日本に来て、着物着てこんなにたくさん写真撮って、なんて思うのか聞いてみたかったけど、きっと予想もつかない答えが返ってくるのでしょう。

 それにしても何という事か、予約が全く入らなくなり、明日が最後のゲストなのです。まあまあ商売やっていれば色々あるからと慰めらつつ、変えられることは変えてみたもののなしのつぶてです。毎日悲壮な気持ちでいましたが、ここへきて近所の方から百枚以上の着物をいただいたり、ゲストの方から紹介されたというお客様が何組かあったり、自分のサイトで紹介して下さる方へ私のホームページをお知らせしたり違った動きをしています。大量の着物の手入れと整理、ホームページをなるべく英文化すること、そしてこれまでのゲストの方々へのコンタクトなどなどやるべきことがたくさん出てきました。予約がないなら外へ行けるし、名刺も作っていけるし、受け身でなく発信していけばいいのかと思っています。

 神様はその時その時にやらなければならないことを与えてくださる、今起きていることを真摯に受け止め昇華させていけばいいのでしょう。同居している義母がかなり狂いはじめ、連休中騒ぎ続け悪口雑言の毎日でどこへも行けなかったのですが、お釈迦様がある男に激しく誹謗中傷された時一言も反論せず言われるがままになっていて、一方的に悪態をついてくたびれ果ててへたり込んだ男にお釈迦様は「私はあなたが差し出した悪口を受け取らない。それは差し出したあなたのものである。そのまま持って帰るがよい」と言われ、男は黙り込むしかなかったという話を読んで、納得しました。

 着物に守られ、ご先祖さまに守られ、たくさんの人に協力してもらい、帝釈天に二百回近く通ってお釈迦様を拝みいつくしんできたこの空間を、デイサービスにでもしたらとこともなげに言われた時、この人たちは拮抗勢力である”リトルピープル”で、正義を滅ぼそうとしているのだと気が付きました。まだここは月が二つあるのです。

 気を付けてそっと生きていきましょう。たくさんのゲストたちにお礼をいいながら。