お流れを

 一か月前くらいに家族四人でマレーシアから来てくれたゲストの紹介で、シンガポールから結婚十年目のご夫婦が来てくださいました。一つ年上の姉さん女房の奥様はいつも朗らかに笑いながらスリムな静かな旦那様の世話を焼き、二日前に家を改装するのでいらなくなってたくさんいただいた着物のなかから花柄のブルーの薄手の小紋を選んで、賑やかに柴又へ向かいました。

 電車の中で写真撮るとき「ワサビー」と教えたら連発するし、「からあげー」「ハイボールー」などなど覚えた日本語タイミングよく使いながらコロコロ笑い続け、団子より日本酒アイスを選んだ彼らにスペシャルサービスで、家でおちょこで日本酒を飲んだのですが、ここでうけた言葉が「お流れを」でした。夫は芸者さんと旦那さんのシチュエーション」で、着物羽織って袖から腕の白さを見せつつ色っぽくお酌し、飲んだ旦那さんが自分の盃を差し出して芸者さんに渡しそこで「お流れを」と言って旦那さんについでもらい、自分も飲むというパターンを実演してました。

 私は茶事という茶道の行事で懐石料理を食べながらお酒をいただく時、千鳥の杯というのがあってもてなす側と客とのおさけのやりとりがやはり「お流れを」というので、その形をやりました。辛い辛いと言っているお茶のお稽古に中には、知られていない日本の伝統がたくさん詰まっていて、日本人が知らないことを外国人が知っていくのですから感心してしまいます。変人と言われ続けている私たち夫婦ですがゲストたちにもfunnyと書かれ、やっぱりおかしいのかもしれませんが、こんなにもいろいろな興味深いことがあるのに、退屈だ、やることがないとテレビに向かって過ごすのはあまりにもったいないと思います。

 日々是好日、照る日も曇る日も雨の日もいろんな日がありますが、どの日もどんな状況も自分の人生にとって意味あるものだから、逃げることなく積極的にその状況を精一杯生きていきましょう。