寅さん

 久しぶりに続けて仕事をしています。連日35度近い暑さが続くので、ゲストにもかわいそうな気がするのですが、女性陣は袷の訪問着など着せて写真を撮り、ティーセレモニーをして、それから浴衣に着替え柴又に行っています。小さい扇風機を持参している外国人が増えてきましたが、一応うちは団扇を持って行ってもらいます。景品でもらう団扇、百均の団扇、竹でできた高価な団扇(多少難ありで、無料でもらいました)とより取り見取りなのですが、昨日は柴又のお店の方が、「竹でできている団扇持ってる!」と言ってておかしくなりました。

 疲れて夜ゴロゴロしながら「男はつらいよ」の映画を見ていたのですが、寅さんの妹さくらの息子が大学生になり、勉強はしない、酒は飲む、親には逆らうと思春期の反抗を重ねてトラブルが起きた時、寅さんがそっと支えてくれて、それに感謝した息子君が別れ際に柴又駅のホームで寅さんにデパートの袋に入ったセーターをプレゼントするシーンがあり、寅さんも年取ったなと思いながら、私もこの柴又駅のホームでどれだけの時間をゲストたちと過ごしてきたことかと思って感慨深くなりました。でも、ゲストたちにとって、私は晩年の寅さんみたいなのかもしれないとふと気が付き、最近ゲストに手を取って支えてもらったり、団扇で扇いでもらったり、アイスクリームを御馳走になったり(立場が反対になってきました)してきて、申し訳ないなと思っているのですがそうなるとだんだん寅さんの気持ちがわかってきて、駅前の寅さんの銅像、カバン持ってさくらを見ている寅さんはもしかして私かもしれない、と思い始めています。いつかゲストにその説明をしなくてはいけません。