夢を生きる

 八月になってきたゲストはなぜかスカンジナビア半島の方が多くて、この暑さの中浴衣着て外出るのは本当にかわいそうで、女性は「ヒート!」と言って扇風機回して歩いてますが、ノルウェーから来たポールは自分のマンションの9階から目の前に見えるフィヨルドの待ち受け写真を見せてくれ、そのダークな画像見て、私はしばらく絶句していました。こんなところから、こんなところへ来てくれているのです。年上のブロンドヘア、ブルーアイの奥様を持つ三人兄弟の末っ子のポールはアレルギーで赤い湿疹が手などに出ていたけれどバイクが大好きな男性で、初めはぶっきらぼうでちょっととっつきにくかったけれど、最後はちゃんとハグまで持ち込めました。ただ困ったのが日本へきた目的がポケモンラリーで、私たち年寄りにはよくわからず、テンションの高さに付き合えなかったことです。四十代半ばでもポケモンなんだと思っていたら、昨日ドイツから来たチェコとポーランドがオリジンの三十代の女性二人は三週間かけて大阪京都広島東京とアクティブに歩き回り、うちで着物体験をしたのですが、京都で見た舞妓さんにあこがれているようで、日本髪っぽく髪を結い簪をたくさんつけてしっかりメイクをし、訪問着を着てたくさん写真を撮りました。浴衣に着替えて柴又へいき、暑い中お寺を散策しクリームソーダやかき氷食べたのですが、帰りのホームで電車を待ちながらコスプレの写真をたくさん見せてくれて、自分たちでたくさん衣装を作りかつらをかぶってイベントに参加しているのですが、それがとても暑いらしく、浴衣の方がまだ涼しいようです。でもこの話聞いて、プレゼントの着物はコスプレにも使える振袖か何かにすればいいと気が付きました。

 それにしても三十代でコスプレに打ち込み楽しく生きている彼女たち見ていて、最近結婚とか恋愛とか興味ないタイプが増えてきた気がします。はっきり言って、男に魅力がなくなった!というか、特にヨーロッパから友達としてくるカップルになんで結婚しないのと聞いたら、彼女は仕事もしっかり持って経済的にも安定しているし、美人だし、自分と結婚する決め手がないと、ハンサムでいい男なのに今一つ煮え切らない彼氏が言っていました。時々帝釈様のお寺の庭園にいる外国人カップル見ていると、熱く語り合っているのはヨーロッパ男性とミステリアスなアジア女性だったりして、日本文化に魅かれる気持ちも含めて、異文化体験というのを深く心に刻みたい外国人も多いようです。

 熊野古道に夫婦で行った次女が、外国人観光客が多くて民泊でもベルギー人とフランス人と一緒だと言っていました。それにしても台風が日本列島を直撃してしまい海の事故も多いのですが、テレビ見てた主人が「台風来ているのになぜ危険なとこにわざわざ行くのか」と親の危機意識のなさに怒っていました。お盆休みとって行楽地に行き家族でレジャーを楽しむ、それが当然受けるべき恩恵であり、絵にかいた様な幸せを味わうのは当然だ、それを邪魔する自然の存在などありえないというか、考えたこともない、自分が年取って年齢的に上の方にいるのに危機意識や世界情勢、経済危機に対してあまりにも無知であるのに平然と生きていることは間違っていると今非常に思っています。

 ヨーロッパの若い作家の小説を読んでいますが、共産主義から移行したころのブルガリア、セルビア、マケドニアのリアルな生活状況とか、川で分断された村に住む恋人たちの逢瀬は川の中で、見つけられれば背中を銃で撃たれてしまう、これが事実の話で、作者の祖父はレーニン支持者、それに猛烈に反発した孫の彼はアメリカのアーカンソー大学に留学し猛勉強しましたが違和感だらけでこもりきり、でももがいてもがいて新鮮な小説を書きだし、沢山賞をもらうまでになりました。

 今まで来たたくさんのゲスト見ていてどんなに大変な状況でも夢を持っているかいないかで、表情が違うし生き方の姿勢が違う気がします。ゲストの夢にあふれた生き方、コスプレでも日本のアイドルに夢中でも(嵐の相葉君の大ファンがいました)日本語学習でも絵を描くことでも何でもいいのですが、夢を持って生きる人たちと接触していると、心が嬉しくなります。そしてそういう中にいたいという私の夢、夢見る人たちと一緒に時を過ごす夢、私は今夢を生きています。