インドのククー君とかなちゃん

 ガールフレンドのかなちゃんと付き合って一年目の記念に着物体験を予約してくれたインドの青年ククー君は、いろんなことにナーバスで、予約する前も細かく問い合わせてきて、私たちは何回もメールでやりとりしました。でも、彼は今横浜に住んでいるし彼女は日本人だし、日本語でインドの宗教について聞けると楽しみにして、彼らを迎えたのです。

 明るくてよくしゃべるカップルでしたが小柄なかなちゃんは舞台女優さんの様で、山形出身、綺麗な黄色の訪問着を着て緑の袋帯締め、ククー君も初めはアンサンブルを着て写真を撮り、楽しみにしていたらしいお茶体験も無事すませ、今度は浴衣に着替えて柴又に出かけました。インド人のゲストは七人目で、のんびりしたタイプと我が道を行くタイプと、とても礼儀正しいタイプがいましたが、多言語の国なので違う地域に住んでいるとコミュニケーションは英語でとっていたのに驚いたのです。静かでのんびりしたところが好きなククー君は帝釈様が気に入って庭園など楽しみ、茶室を見ていつか茶道を習いたいと言っていましたが、彫刻ゾーンに入ってからいろいろ批判が出てきました。

 前からこれは中国系の彫刻だとインド人に言われていたのですが、今回はその前に「なんでこの彫刻は埃だらけで、メンテナンスもしていないのか」ということから始まり、一つひとつの彫刻版の人物のヘアスタイルや服装、体格がさまざまで、中国とインドがいろいろまぜこぜになってしまっているといいます。インドにはたくさんの宗教があり仏教もその中の一つだし、「かなちゃんもブッダ、僕もブッダ、あなたもブッダ」と彼がいうことは私も言っていることでよくわかります。でもこの彫刻は何をいいたいのかわからない・・・そうです。

 日本は狭い国だし、ほかからの情報も入らず、作業場にこもって十人の彫刻師が十年間一生懸命一つずつ彫刻を仕上げて、今まではゲストはその技術とテクニックに感動し、アメイジングと言ってきました。これは優れたクラフトです。でもここへきて内容に関しては感動されなくなってきたというか、ヒンズー教をはじめインドには様々な雑多な宗教があり、ひとつひとつがそんなに繊細に細かく存在するものではなくもっとおおらかで猥雑でごちゃごちゃしているものなのかもしれません。

 ククー君は体験がとてもよかったのでお礼に、ご飯を御馳走してくれると言ってくれましたが、母の病院へいかなければならないので気持ちだけいただきました。私が十年前に縫った男物の浴衣(残念ながら、衿付けが下手でした)をプレゼントにあげたら何かお返ししたいといわれ、ヒンズー教の神様を説明した本が欲しいとお願いしましたが、帰り際にこの前上野の博物館でやっていた東寺の展覧会に出品されていたイケメンの帝釈天像の写真見せたら、これぞインドの神と言われ、ほんとにびっくりしました。なんでもいいけどやっぱりイケメンはいいな、これをメインに説明しようかしら。

 これからどんなゲストが来て、どんな事を帝釈様で語り合うのか、自分でも見当がつかなくなっています。