涅槃寂静 (ねはんじゃくじょう)苦しみがなくなった静けさ

 八月の末に救急車で入院して二週間、94歳の実母の状態はよくありません。心臓も悪いし片肺は白くなり、痰も多くて看護師さんや先生が懸命に治療してくださっています。ほとんど寝ているし、酸素入れ点滴して少しでも楽になることを願っていますが、体自体の反応が良くなる方向になかなかいかないと先生はおっしゃいます。四十年前の今頃も父の看護をしていました。

 義父が生きていた頃よく言っていた言葉が、「死ぬる時節には死ぬるがよく候。災難に遭う時節には災難に遭うがよく候。これは災難をのがるる妙法にて候。」でした。

 考えられるあらゆる手をうち、大変な中で精一杯のたうち回る。病気の時は精一杯病魔と戦う。死ぬときは死ぬよりほかはない。

 災難に遭わば遭えとばかり、自ら置かれた場で精一杯生ききり死にきっている時が、人生の中で充実していて素晴らしい時間というのです。眉間にしわを寄せて苦しそうな時もありますが、穏やかに精一杯息をして寝ていればそれだけでほっとします。

 あるがままに 体のままに 心のままに 幸せに ほほえんで 悠々と    またあした 行きますね。  おかあさん