様々なご縁

 着付けを教えていらっしゃる方が生徒さん用の留袖を探していて、うちにいらっしゃると言うので八枚ばかり揃えてお待ちしていました。161センチの方が着られるものをというリクエストだったので、いらっしゃるのは大柄な方かと勝手に想像していたら、現れたのは小柄でかわいらしい女性でびっくり、でも還暦でお孫さんもいて20歳で結婚し四十代で美容師の免許を取り大手のホテルで働いてらしたとのこと、高砂で生まれ小さい時から骨折をよくして、ずっとうちに治療に通っていたなどなど聞いていたら、彼女の妹さんの息子さんとうちの息子は同級生で本当によく知っている方とわかり、主人も出てきてお母さんにおんぶされて来てた子だと覚えていて、まあまあ時が行きつ戻りつしていました。

 本題の留袖、なるべく着せにくいものの方が勉強になるというので、重い菊の柄のを持っていかれ、帯も柄合わせの難しいもの、花嫁さんの帯結びの練習に丸帯はないかと聞かれ、あります!(どなたに頂いたか記憶がないのですが)本当に皆様にいろいろ頂戴したものがそろっております。ガラガラのスーツケースに詰める時「ギューギューでごめんね、すぐ出してあげるからね」と話しかけていたのがおかしくて、こちらも「頑張ってお役に立ってね」と思ったりしていました。

 着物の世界は広いようで狭いのか、小岩の美容学校に通い、今パートで働いているのは千葉ホテルの山野愛子美容室だとか、なんだか頭の中が混乱してきますが、別れ際手を握られてお礼を言われ、今なかなか外に行けない分、こうやっていろんな方に来ていただけるのはありがたいことです。柴又のお煎餅屋さんの方の紹介だったのでその方もいらしたのですが、亡くなられたお母様の着物やコート頂き、これに黒の羽織着て卒業式などに来てくれたのとおっしゃるので、夜その組み合わせでボディに着せ、写メを送りました。うちの母も黒羽織着ていたなと思ったりしながら、こうやって大事なものを持ってきてくださる方のお気持ちにどう答えたらいいのかと考えています。

 奥様を亡くした旦那様が、残された着物をどうしてよいかわからず私の友人に託し、彼女がこちらにもってきてくれたのですが、闘病の跡がうかがわれる着物もあり、よその方に着せることはできないのですが処分することもできず、ただ抱きしめるだけでも良いと思ってしまってあります。想いのこもった着物たち。いろいろなことを考えさせられます。