玉三郎さんとドラえもん

 台風の後ワシントンに住む20歳のロシアの女の子が着物体験にやって来ましたが、ドイツからのゲスト二人は飛行機が飛ばなくて来られずキャンセル、マンツーマンの体験となりました。複数ゲストがいると互いに話がはずむ時があり、離れて見ていたりするのですが、最近はそれではいけないと反省し、ゲストの求めるものもうっすらわかるようになってきたので、四時間みっちり気を抜かず体験を組み立てています。

  高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した歌舞伎役者の坂東玉三郎さんが記者会見で「いつもゼロ地点のフラットなところからものを考えられる人間でありたい」と芸術作品を作る際の心構えを語っていました。いつもいつも原点に戻り考え直しやり直す姿勢、慢性的に惰性的に同じことをやっていくなんてもってのほかです。(自戒!)

 神は細部に宿る、だから細かいディテールにこだわることで本質が決まるし、その世界に入り込みその役を通した向こう側の世界を感じてほしい、戯曲に書かれた心と作家がその時代にどういう思いで書いたのかを想像する力、それを美しく見せられる技術など、すべてを統一的に表現できたものが優れた舞台美術だと思うとも言っています。

 玉三郎さんは身長が173センチあり顔が小さくて細いので、舞台で女形としてどう美しく見せればよいのか苦労して研究していた時、よりどころになったのが江戸時代の女性を描いた浮世絵で、鳥居清長の浮世絵など8頭身、9頭身もあるような女性が描かれていて、そういう絵を見ながら描かれている体のしなやかな線、衣装の曲線、醸し出される雰囲気、どの景色の中にどういう形でいると美しく見えるのか、そういうことを学んだそうです。日本画に限らず西洋美術も観るし、音楽も邦楽洋楽ジャンル問わず聴き、旅にもたくさん行って景色を楽しみインスピレーションを得る、玉三郎さんはいつも演劇のことを考えながら生きていらっしゃいます。

 いろいろな考え方、生き方、個性があり、それぞれ考え抜きながら進んでいかれています。人工知能AIがだんだん存在感を増してきて、様々な分野で人間以上の能力を持つのではないかと怖れられている面もあるようですが、AIを使うのはあくまでも人間だし、未来予測はAIは苦手でそれが出来るのは人間だけ、どんな未来がやってくるのか自分の頭で考え抜くことが大事と言われています。

 そんなときある若いAIの研究者がドラえもんを作りたいと日々研究に励んでいるという記事が出ていて、「本気で人を幸せにできる技術」「ドラえもんはのび太という一人の人間を、とことん付き合うことで幸せにした」「一人の人を幸せにすることを広げていく」AIの開発を目指しているそうです。優しい・・・

 いろんなことに惑わされ、ネット情報やマスコミに翻弄されて不安がったり怖れたりするけれど、結局大事なのは自分の心の確かさであり、真っ直ぐな姿勢と真摯な想いではないかと思います。自分の道を切り開いている人は自分のスキルと技術でどこまでも戦っていきます。武器を持て、道具を持て。

 野村萬斎さんが車いすラグビーワールドチャレンジの開幕戦で、紋付き羽織袴で君が代を斉唱している動画を先ほど偶然見ました。謡のように狂言のように、朗々と詠う姿はカッコイイ!何かが出来ていればなんでもできるのです。凄い・・・

 明日はメキシコのトライアスロンのプロ選手が着物を着たいとやってきます。自転車で?来るのかしら。未知の、予測できない体験になりそうです。