ビィヨンセ

 お昼過ぎに義母の病院へ夫は行ってしまったので、今日は私は一人で急な予約のお客様を迎えました。50歳と43歳、180ポンドのウェイトでカリフォルニアからのブラックビューティーさんはにこやかに堂々と現れ、頂き物のどらやき食べてもらいながら、なんとなく素性を探りつつ着物を選び始めました。昨日は豪雨だったのですが今日はお天気よいけど少し暑く、またまた私の麻の薄い襦袢を着せて(でも胸が豊かでサイズがぎりぎり)着物着せました。黒人女性は今まで十人以上いらしたのですが、今までは何のこだわりもなかったのに、今回は外に出たらどんなふうに見られるかというためらいが前日からありました。頭はドレッドヘアー、体格良い女性三人(私もいれて!)目立つだろうなと思いつつ、着物選び始めたらびっくり、50歳には見えない若々しいNichelleは渋い挽茶色に金の模様の付いた訪問着を選び帯揚げは真紅、この着物を作った方はいつもたっぷりサイズで作っているので、楽に着せられ、ヒップラインが豊かで帯がきれいに結べなかったけれど素敵でした。物静かなMariaはピンクの花模様の訪問着に品のいい袋帯締め、二人の着物の色のコントラストが絶妙、柴又へ行ったらいつもは中から挨拶してくれるお寿司屋さんの奥さんはわざわざ出てくるし、着物たくさん持っている民芸店の奥様には絶賛されるし、道行く人はニコニコしながら綺麗と声かけてくれるし、二人とも満面の笑みでアリガトーと返していました。お寺の庭園には浅草で着物着てきた中国の女の子が写真撮っていて、うちは彼女たちの倍くらいあるから争わず逃げ出しましたが、着物や帯の質の違いは歴然で、昔義父が体の大きな人間が貧相なもの着るとみじめったらしく見えるから、良いものを着ろ、ということは貧乏では良いもの着れないからお金を稼げる人間になれと息子に説教していましたが、確かに二人とも総額30万円くらいのおしたくをしております。

 彫刻ゾーンでは二人とも黙って写メをたくさん撮り、特にマリアは英語の説明を全部写メしてました。マリアは独身みたい、ニケーレはもうじき孫が生まれると言っていましたが、帰るころにはだんだん陽気になり、別れ際羽織をプレゼントして歌やダンスが得意だというので何か歌ってとリクエストしたら、音楽掛けながらビヨンセを歌って踊ってくれました。かっこいい!Nice!彼女はパリが好きだとか、マリアはタイが好きだそうで、最後ハグして少し早めの時間でしたが別れました。今日は思っていた以上に人々が好意的だったのは何だったのだろうと不思議だったのですが、たとえば八村塁くん大坂なおみさん、サニーブラウンくんなど才能と努力で世界で戦っている若者を心から応援しているという感覚もあるのでしょうか。大きな人間は品格と思いやりと温かさと正義を常に持っていないと貧相になるぞ、じいちゃんの戒めは正しかったのでした。