鬼滅の刃

 娘から久しぶりに連絡があり、このところとても忙しくて、やっと一段落ついたそうです。相変わらず変わった着物の仕事にご縁があり、今回はアニメ[鬼滅の刃]のスペシャルイベントに声優陣が集まり、そのキャラクターごとに作った衣装を着せる現場スタイリストに参加したとか、アニメはゲストたちにも大人気で私たち年配者にはわからないのですが、この鬼滅の刃の画を見せるとキャーキャー喜んでいるので、外国でも人気なのでしょう。アニメ業界は潤っているのか、ギャラもいいし衣装の羽織や着物もとても質のいいものだそうです。

 この衣装の製作者”キサブロー”さんは創業90年の仕立て屋「岩本和裁」の四代目で着物業界の革新的存在であった初代岩本喜三郎の名を受け継ぎ、和洋のみならず性別のボーダーを超え、全ての人々を既成概念から解放することを目標に、ありのままの自分に寄り添うアウトフィットを提案するブランドを作り上げています。今回もアニメの設定画と原作の漫画を読み込み可能な限り忠実に再現し、主人公が着ている緑の市松模様の羽織は染めにまでこだわり作り上げました。本物を知り卓越した技術を持ちそして優れた血筋の彼女が作り出した衣装をスタイリングする現場に参加させてもらえるなんてありがたいことですが、私も柴又から頂いた女物の紬を娘を通じて岩本和裁にお願いし男物に仕立ててもらったことがあります。キサブローさんのサイト見ていて、いつも男物を颯爽と着こなすショートカットの彼女はちょっと天海祐希に似ていると思っていたのですが、自分のアイデンティティーに悩み苦しんだ時期を経てブレイクスルーした後は、会う人会う人を好きになれると言っていたと娘から聞いて、「私もその気持ちわかる」といったら「さすが屈折している人にはわかるんだ」と妙に感心されました。

 人と同じことが出来ない、感じ方や行動が違うことを、私は小さい頃からずっと悩んでいたのですが、それで人を傷つけたり怒らせたりあきれられたりすることはしょっちゅうで、でもどうにもならない、年とった今もいまだ後悔の念が消えずあの時こうしていればとは思っても今更できないのですが、今こうして外国人と接してきてわからない言語で話しながら何かの感覚が解り理解し合い、最後心からハグできるというのはその負の気持ちの積み重ねから出てくるのかもしれないし、そしてほとんどのゲストのことを好きになれるのです。

 それにしてもアニメの内容を知れば知るほど、こんなにシビアで究極の人間存在の原点を問うようなものが受けるのか不思議でなりません。最近柴又も着物の方が増え、外国人もたくさん来るし、ちょっと飽和状態な気もします。鬼滅の刃のコスチュームつけてゲストが参道歩いたら、それがわかるのは外国人だけかもしれません。面白いかも・・・