ルビーモレノ

 朝から激しい雨が降っていて、昨日の七五三の時はあんなに天気が良かったのにと思いながら、午後から止むのではないかと楽観視していたのですが、今日のゲストからなんと日本語で「雨が激しいですが、大丈夫ですか」と問い合わせが来ました。「安心してきてください」と返事したものの、12時過ぎても雨は止まず激しくなりさすがに延期してもらおうかと思ったらいつの間にか玄関に小さな女の子が佇んでいます。おとなしくて声も小さく、お国を聞いたらフィリピンだそうでそうそうルビーモレノさんに似ているかわいい彼女は食事はまだとのこと、座ってコンビニの袋から取り出したのは納豆巻で、でも食べながら小さい声で失敗したとつぶやきながら、きちんと全部食べました。

 とにかく静かな子で、今日は彼女一人だし(でも他にゲストがいても盛り上がるタイプではないようです)どうなるかと思いながら着物選びを始めました。他のゲストの着物の写真見ていて、着たいと言ったのが黒の大振袖で、豪華なのですがかなり大きいので、23歳だし振袖着せようと小柄用の振袖何枚か着せたのですがピンとこないでいて、この前美容院さんから頂いた濃いちょっとダークな赤の大振袖が壁にかかっていたのですが、その色が彼女に良く合うのでそれを着てもらいました。短い髪にお花つけて口紅も赤を付けたのですが、恥ずかしがり屋なので、すぐごしごしティッシュで拭いてしまうし、雨ゴート着てお外出ても顔をうつむけて歩くのです。前に北アイルランドから来たママが猛烈に恥ずかしがっていたの思い出しましたが、紫のコート着ているからまだ地味に見えるのですが。

 電車に乗っても恥ずかしいのでセルフィ―撮ったり話していたら、なんとフィリピンの大学で琴を習っているのですがギターも弾くしバイトで演奏もしているみたい、でも今は疲れたので休学中、五日間東京だけを旅行して墨田区の民泊に泊まり昨日は友達とスカイツリーに行ったそうです。日本語もよく話すしひらがなと漢字も少し読め、あとあんこがダメ、お酒が好きタバコも少しという23歳の彼女は少しずつほぐれてきて、参道ではいろいろなものに興味を示し、団子も食べないけど写真だけは撮り、だんだん楽しそうになってきました。山門に入ってからはコートを脱ぎ、振袖姿で写真や動画をたくさん撮り、雨上がりのちょっと暗い境内にダークな赤がとても映えて想像以上に素敵でビックリしました。実はこれは絹ではないのですが、だから雨でも心配ないし、最近の着物の質も上がっていると実感しながら、内気で静かな彼女がとても綺麗で着物が良く似合い、雨上がりで誰もいないお寺の中で(誰もいないのが良かったみたい)思いっきり楽しんでくれたのが何よりも嬉しかったのです。フィリピンは暑いから紅葉を見たことがないそうで、回廊に落ちている落ち葉をおみやげにすると言って拾ったり、いろんなポーズとったりするのを見ていて、一対一でゲストと対峙することが必要なケースが増えてきたと実感しています。

 ちょっと優柔不断なタイプだというのが着物の選択に付き合った主人の感想ですが、私も似たところがあるので類は友を呼ぶんだろうと言っています。天気を心配したり柴又行って喜んでくれるか不安だったりしましたが、予想以上の満足感があったようで、この体験はずっと忘れないと言って帰って行きました。その時その時のゲストにあった着物をタイムリーに着せることができるということは、天の配剤というかいろいろなものが助けてくれている気がしてなりません。本当にありがたいことです。