初仕事

 今日は朝から雨ふりで、午前中は義母を根津にある病院に連れていき、なんだかひどく疲れて帰ってきて午後からのゲストの支度をしていたら、突然日が差してきて良かったと思っていたのですが、タクシーで来ると連絡あったゲストはうちがわからないようで、30分遅れでベビーカーと共に到着しました。旦那さんは中国人、奥様はロシア人、二歳のジェシカは片時もじっとしていない女の子で、三人の予約なのでなんとか七五三の着物着せようと頑張ったのですが、逃げ回り無理でした。五十代の旦那さんは主人と同じ体系で適度にお腹も出ていてアンサンブルを着こなし、四十代の専業主婦の奥様は小鳥と花模様のピンクの着物を着て綺麗でした。私たちは孫がいないので、ジェシカをかまうのが楽しかったのですが何としても着物はダメで、正装のパパママの間に彼女は木刀を持っておさまり、やっと写真を撮りました。

 香港とか中国とか回って一昨日日本に着いたのですが、何かの食べ物でアレルギーが出てお医者さんに行ったようで、おなかはすいているし午後は昼寝タイムのようだし、柴又行ってもお店のおもちゃ欲しがったりお寺の廊下を靴下で歩くのを寒いとパパママが心配したり、結局少し散策しただけでタクシーでうちへ戻りました。かなり過保護な感じでまあそれもありかと思って見ていましたが、本堂で鉦の音と共にお経がはじまった時のジェシカの真剣な顔とか、静かに庭園をじっと眺めていた姿見て、日本人の子供にはない深さを感じました。とにかくぐずり始めると手に負えないので帰ってきて、またうちの中を走り回りおせんべ食べたり最中食べたり、考えたら皆おなかすいているようで、今日は何もおもてなしが出来なかったので、パパにはこの前娘が持ってきてくれた丹前と三尺帯、ママには赤い道行コート、ジェシカには黒地の袋帯をプレゼントしました。

 これから赤坂までタクシーで帰るそうですが、帰るまでジェシカは寝なかったしパパに促されて主人の頬にチュッとしてくれ、今日はハグは無理かなと思ったけどみんなとできて、なんとなくホッとしました。わざわざこんな遠くまでタクシー使って来て下さる方々の意志というか縁というかそれを感じながら、でもいつも同じようにできるわけでもなくて、それをどのように私がアレンジしていけるか対処していけるかそういう勝負になっているように思います。引き出しを多くしてどこを開けても何かが出てくるようにしておかなければなりません。

 それにしてもトランプ氏やゴーン氏のように、したたかで訳の分からないことをまくしたて、ことを進めようとするワールドワイドな情勢がそこここに迫ってきています。今日のカップルもどうして結びついたのかよくわからないのですが、私たちが懸命にジェシカと取り組んでいることを嬉しく有難く思ったようで、ロンドンに来たときは是非来てくれと言われ、フォートナムメイソンの紅茶セットをお土産にもらいました。あまりに慌ただしそうでレビューは無理だろうと思っていたら、夜にパパから早速頂き、ジェシカが大きくなったらまた来るとのことでした。今までも、モンゴル、ドイツのゲストのもてなしが十分にできず、ひどく叩かれたことがありましたが、何もない方がかえっておかしいのかもしれず、どんなアクシデントがあろうと一つずつ地道にクリアしていく覚悟が必要だと改めて感じた仕事始めでした。