着物姿に求めるもの

 今中国は新型肺炎で混乱しているので、柴又でも「春節にゲスト来るの?」と聞かれたりしていたのですが、実は昨日のゲストは中国からのカップルでお昼前にうちに来てしまい、かつ着物着る予定の男の子は風邪をひいているので着物着ないとのこと、えー!大丈夫かしら、他のゲストも二人来るのにと心配になったのですが、仕事は?と聞くと二人ともフィリピンで働いていてそこから来たというので、ちょっと安心しました。小さくて細い彼女は本当に整った顔立ちの綺麗な27歳の女の子ですが、予約当初から質問攻めのメールが続き、今日も早くから問い合わせばかりしてきて、面倒くさいタイプなのでした。着物体験は初めてとのこと、シンプルな好みで黄色の小紋にオレンジの帯締めたのですがなんせ細くてスポーツタオル巻いたくらいでは間に合わず、ズルズルっとした帯結びになってしまいました。ヘアスタイルはアップを希望、気に入っているらしい着物のサイト写真見せてくれたのですが、独特の雰囲気のある清楚な女の子がシンプルな着物着て横座りに座っているもので、そういう写真を撮りたいようです。そうなると、ちょっと崩れかけた帯も彼女の求める風情なのかもしれず、とにかく彼氏も私も本人もいろいろなところでたくさん写真を撮ったのですが、夜Gメールで送ろうと整理していて同じような写真ばかりだろうと思ってみてみると思わず息を呑むようなものばかり、どれもこれも表情やニュアンスがみんな違っていて、きれいなのです。本人もわかっているのでしょうが、何といったらいいかもし私が画家や写真家だったら彼女で作品作りたいと思うでしょう。色っぽいのでもなく、華やかでもなく、魔性なのでもなく、ポージングにしても池に面した回廊に膝を抱えて座り込んだり、今までにないポーズをとり、明らかに何かを見て影響されているのでしょうが、この女の子の前世は何なのかしらと考えこんでしまいました。

 うちへ帰り、着物を脱いで白い長襦袢姿になった時、また彼女の目が妖しく輝きだし、そのままの格好で自撮りを続けていました。おみやげに茶色の格子のウールの着物と白い長襦袢を持っていきましたが、旅館の和室で長襦袢着て写真とりまくるのでしょう。淫靡とかいうのでなく、ロリータでもなく、何なのか、彼女は何を求めているのか、何をどう着たかったのか。多分うちに来てよかったのだとは思いました。もっともっといろんなものを着せたかった気もしますが、最後に着た白の長襦袢が彼女の本質なのかもしれず、日本人でない彼女が着物に憧れて着てみて自分の存在で何かをアピールしている、なんなのでしょう。

 画家のバルテュスと結婚した節子・クロソフスカ・ド・ローラさんの若い時に似ているかしらとふと思ったのですが、多分着物を着るという感覚を純粋に研ぎ澄ましているのかもしれず、それにしても色々なリクエストや要望に応えられるよう、私ももっともっと感受性を深めていかなければいけないとより強く思っています。

 世の中の流れが変わってきています。過去に縛られることなく、目の前に存在する今を丁寧に抱きしめること、スピリチュアルカウンセラーのトシ&リティさんのブログにあったこの言葉が印象的です。