ブランド

 今年は東京オリンピックが夏にあって警備の人員が確保できないので、花火大会が五月か十月ごろになるとか、着物業界では夏の浴衣が売れないと困っているそうです。娘はこの何年か新宿の伊勢丹で京都のひで也工房の浴衣の販売をしていて、一枚四万円と結構高いのですが品はかなりよく、うちの場合複数の外国人が着るので結構購入したのですが、時々全員ひで也さんの浴衣を選んで着ることもあり、柴又で評判になったこともありました。

 娘曰く、今一番困っているのは在庫をどうするかということだそうで、ネット販売も考えているとのことですが、ノースフェイスでは15万円の限定ジャケット50着に5万人が殺到したという記事を読んで、ブランドというのは絶え間ない努力と研鑽と熱意で作られたものが絶対的な信頼と憧憬に支えられて作り上げられるものではないかと思うし、ひで也さんの浴衣たちがブランド化するには、多分何らかの物語が必要なのではないかと思っています。そして、ひで也さんの浴衣を着た沢山のうちのゲストたちにはたくさんの物語がありました。多分今私がやらなければならないことは、できる限りこれをあらわすことでしょう。

 昨日娘が教えてくれた無印のぬかみそを買いに亀有のアリオへ行き、帰りは30分くらいかけて歩いて帰ってきました。葛飾区は川が多く、だから橋も坂もたくさんあって、母の施設に通う時は自転車で行き来していて、膝が痛いとこぼしていたら主人が電動自転車を随分前に買ってくれました。酷使した自転車はそろそろ不具合が出てきています。いろいろ考えながら橋の上を歩いて渡っていた時、不意に どんなに橋を渡っても坂を上っても、母の居るところにはもう行くことが出来ないのだ という思いがわき、橋を渡りながら泣いていました。今までは、寒くても暑くても橋を渡れば母の居る施設や病院に行けたのに、もう母はいないのでした。納得して、きちんとあれだけ別れを告げたのに、息が詰まるような悲しみは突然襲ってきます。何とか昇華するために、動きましょう。