新型コロナウィルスはなぜ発生したのか。

 柴又の亀家の女将さんのブログが節分以来久しぶりに更新されてたのですが、参道は閑古鳥が鳴き、2月3月の予約はすべてキャンセルだとか、でも25日には松の寒肥が行われるそうで、100本の日本酒と肥料が根元に入れられるそうです。

 それにしても今の混乱した運気というかコロナ肺炎に対する認識とかひいては人間の生き方自体があまりに無知すぎるゆえの結果に過ぎない気がして、基本の医学的考え方を探して見ました。

 風邪の熱、のどの痛み、咳、タンといったあの不愉快な症状は、ウイルスを排除するための免疫反応の結果です。つまり、自分で自分を守るための自己防衛反応ともいえます。発熱で体温を上げてウイルスの活動をおさえ、鼻づまりでさらなる異物の侵入を防ぎ、鼻汁とくしゃみと咳で異物を体外に排除しているのです。その自浄作用を薬で抑え込もうとすること自体がナンセンスだし、人間が作り出したいかなる化学薬品よりも効率的かつ理にかなった方法、『風邪症状』という薬を用いて自分自身で風邪を治している(ウイルスを排除しようとしている)最中なのです。人が生まれながらに持っている能力のすばらしさを感じるのです。

 食物連鎖の最上位にいて、地球で最強の地位に上りつめた人類にとって、ほぼ唯一の天敵ともいえるのがウイルスです。長い歴史を振り返ると、ウイルスが病気を起こせば人間は免疫を獲得して対抗し、さらにそれをかいくぐる新型のウイルスが出現する、というように、ある種の軍拡競争をし続けているわけですから、彼らも必死なのでしょう。

 インフルエンザ・ウイルスは普段はシベリアやアラスカ、カナダなどの北極圏の近くで、凍り付いた湖や沼の中にじっと潜んでいます。春になって渡り鳥のカモやガンなどの水鳥が繁殖のために戻ってくると、ウイルスは水鳥の体内に潜り込んで腸管で増殖します。渡り鳥は年に二回、繁殖地と越冬地の移動の途中でふんといっしょにウイルスをばらまきます。渡り鳥の中には北極圏から南極圏まで、長距離移動するものもいますから、ウイルスを地球規模でばらまいているというわけです。

 初期には鳥も感染してたくさん死んだと思います。しかし、長い長い年月をかけて共生してきたので、今では宿主を発病させることはありません。共生というのは珍しいことではありません。たとえば恐ろしい病原体と人間でも長い年月の間にはしだいに共存するようになります。病原菌の方が強すぎると宿主を殺してしまい、共倒れになって子孫を残せなくなってしまいますから、平和共存を目指さなくてはならないのです。

 水鳥のふんに潜むインフルエンザ・ウイルスが人間にたどりつくまでに豚が重要な仲立ちをしています。豚の呼吸器の細胞は、多くのウイルスが感染できるようになっていて、ここに水鳥の持つウイルスが来ると、人に感染する型が生まれるのです。豚は新型インフルエンザ・ウイルスの『製造工場』ともいえるのです。 豚でできた新しい型のインフルエンザ・ウイルスが、ヒトに広まっていくわけですが、その世界的な流行の起源と考えられているのが中国の南部です。中国南部では、アヒルやガチョウが豚といっしょに飼われていることが多いのですが、家畜化されているアヒルやガチョウは、水鳥が運んでくるウイルスに容易に感染します。アヒルやガチョウが豚から新亜型のウイルスに感染し、ヒトに伝わっていくと考えられています。過去 100 年間に発生したインフルエンザの世界的流行の多くは、中国南部に起源があったと考えられています。
 感染症は環境の変化から流行するというのが持論です。西アフリカのエボラ出血熱の大流行は熱帯林の破壊が原因であり、マラリアやデング熱などの熱帯病は温暖化で広がっています。今回の新型コロナウイルスに関していえば、人間がこれほどの過密社会をつくらなければ、彼らも流行を広げられなかったでしょう。

 コロナウイルスはごくありふれたウイルスです。風邪の原因ウイルスは数種類ありますが、私たちが日常的にかかる風邪の 10 ~ 15 %は、コロナウイルスによって引き起こされています。コロナウイルスが最初に発見されたのは 60 年ほど前のことです。風邪の患者の鼻から見つかりました。ただコロナウイルスの歴史は非常に長く、遺伝子の変異から先祖を探ると、共通祖先は紀元前 8000 年ごろに出現していたようです。以来、姿を変えてコウモリや鳥などさまざまな動物の体に潜りこんで、子孫を残してきました。

  コロナウイルスの仲間による感染症は、ヒトに感染してカゼの症状を引き起こす 4 種類と、新型コロナウイルスのように動物を経由して重症肺炎の原因になる 2 種類の計 6 種が知られています。 感染者を死に至らしめる可能性のあるコロナウイルスはこれまでに 3 回出現し、パンデミック(世界的流行)引き起こしています。最初は 2003 年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、次が 2012 年のMERS(中東呼吸器症候群)、そして今回です。ウイルスが世代交代を繰り返しているうちに、突然変異が蓄積して重篤な症状を起こすように変異したのでしょう。        ウイルスの唯一の目的は「子孫を残すこと」につきます。地上最強の地位に上り詰めた人類にとって、唯一の天敵が病原性の微生物です。約 20 万年前にアフリカで誕生した私たちの祖先は、数多くの病原体と戦いながら地球のすみずみに広がっていきましたが、とくにウイルスは強敵でした。知られないままに、多くの地域集団が全滅させられたことでしょう。人類の歴史は 20 万年ですが、微生物は 40 億年を生き抜いてきた強者です。 

 アメリカでは現在、インフルエンザが大流行していて、アメリカ疾病対策センターは、少なく見積もっても 2600 万人が感染し、死者は少なくとも 1 万 4000 人と発表しています。( 2 月 19 日CNNニュース)。日本でもインフルエンザで、毎年、数千人が命を落としていますし、はしかや風しんの流行も止められません。 ヒトと微生物の戦いは、まさに「軍拡競争」です。ヒト側がワクチン、新薬などを繰り出せばウイルス側は変幻自在に変異して、せっかく獲得したヒトの免疫をかいくぐり、薬剤に耐性をもつウイルスで攻めてきます。
 私たちは、過去に繰り返されてきた感染症の大流行から生き残った「幸運な先祖」をもつ子孫であり、その上、上下水道の整備、医学の発達、医療施設や制度の普及、栄養の向上など、さまざまな対抗手段によって感染症と戦ってきました。それでも感染症がなくなることはありません。私たちが忘れていたのは、ウイルスも 40 億年前からずっと途切れずにつづいてきた「幸運な先祖」の子孫ということです。しぶとく生き残ってきたヤツらなのです。 多くのウイルスは、野生動物、家畜、そして人の体の中に潜んでいます。たとえばオオコウモリからは 58 種類のウイルスが発見されていて、「病原体製造器」といわれています。キクガシラコウモリが持っていたウイルスの疑いが強いです。このコウモリは日本にも生息しています。それがほかの動物を経由して人に感染しました。ゲッシ類、タヌキ、ヘビ、アカゲザル、犬猫などからも同じウイルスが分離されており、仲介役はまだわかりません。中国では生きた野生動物を買って食べる、という食文化があります。先ほど申し上げたように、動物の中には膨大な未知のウイルスがいます。:微生物にとってヒトの体内は温度が一定で、栄養分も豊富な恵まれ環境です。彼らはここから追い出されたくないでしょう

 今回のウイルスの致死率は数%ほどと見られています。大流行を引き起こしたほかの感染症に比べれば毒性は低めです。ただ低いだけに、感染力は強力です。感染しても発症せず、本人が気づかないまま広げていることも考えられます。今後ですが、ウイルスにかかった人は体内に免疫ができますから、免疫を持った人が増えれば、感染のスピードは弱まると予想されています。

 いやはや、これは戦争であり、危機なのです。