己を鼓舞せよ

 久しぶりに留袖を着せる稽古をしたいと娘が調布から帰ってきました。今は非常事態なので、卒業式の着付けがキャンセルになり、働いているデパートの売り場も人が歩いていない状態だそうで、先行きどうなるか見当がつかないようです。ただ娘は今までもいろいろな分野の着物着付けにかかわってきていて、彼女ならできるという特殊な分野の依頼があるとのこと、普通の着付けをやる方はすべてをきちんとやっていくのですが、いろいろなことにアバウトな私たちは、これもありではないか、この方が良いのではとだんだんエスカレートしてきていていますが、でもやはり素材や品格、美しさといったものはきちんと保っていかなければなりません。

 それと、例えば歌舞伎が好きでよく見に行っていたり謡が好きな母方の親類の発表会の着付けをしたりすることもあり、能や狂言もよく見ているのですが、今能楽男子というのがあって能楽と若いイケメン俳優が融合した新コンテンツが誕生して、能楽男師というのだそうですが、大蔵流狂言師のプロデュースで新しい狂言の世界を作るというのです。若い彼らにとって世界でも注目されている能の世界を知ることは素晴らしいし、新しい価値観で能楽に取り組むのでしょう。外国人に人気の宮崎アニメの「風の谷のナウシカ」が歌舞伎になり、その映画版を見た娘が感動しています。また日本や外国の若い子たちに大人気の鬼滅の刃というコミックも凄くて、日本文化や民話などがベースになった上での主人公の凄まじい生き方や戦いは年取った私には少しハードですが、頑張って読んでいるとこのカオスの世の中を生きていくよすがになりえるものだと思えるのです。

 鬼たちと戦う時の、己への厳しさや考え抜きながら技術を尽す戦いぶり、もう駄目だと思ったときのギリギリの時の精神力の作り方、これを持っている人といない人がいる、コロナウィルスに対し戦う術がトイレットペーパーを買い占めることと思う?レベルは超越した(当たり前ですが)戦いを今私たちはしなければならないことを鬼滅の刃は示しています。主人公の炭治郎が着ている緑と黒の市松模様の羽織などをきちんとした生地できちんと和裁師のキサブローさんが仕立てるなど若い世代のチャレンジは柔軟で、そして危機意識も持っているのでしょう。でなければあんなに激しい内容のアニメなどが世界中で好まれるわけがないのです。

 もう一つ娘が教えてくれたのですが極上文学という演劇集団があって、坂口安吾、梶井基次郎、夢野久作、江戸川乱歩、芥川龍之介、夏目漱石、森鴎外などの文学作品をイケメンアイドル青年たちが本を持ち朗読するという形での公演をしていて、若かりし頃の私の愛読本ばかり、それをイケメンが・・。今の若者はアスリートでもハングリーでしっかりした哲学を持っている、ほっとするしこちらも負けてはいられないと思います。私が持っている鬼滅の刃の第三巻の題名が「己を鼓舞せよ」でした。この難関にしっかり対峙していきましょう。