米澤京子先生

 中学時代の国語の米澤京子先生の授業は、私にとって忘れられないものです。歯切れのよい口調での的確な文章の解釈が心地よく、いまだに授業風景を思い出しますし、論語の「之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らざると為す。是れ知るなり」を習ったことは私にとって衝撃的で、生涯の座右の銘となっています。夏休みに読んだ本の読後感を個人的に書いたノートを見ていただいたり、卒業してからも御宅にお邪魔させていただいたり、それは結婚するまで私にとって楽しいお正月のイベントでした。家庭を持ってからは年賀状を差し上げるだけのお付き合いでしたが、着物の仕事をしていることをお知らせしたらご連絡いただき、着物や扇子、袴に踊り用の刀までいただいてありがたい限りなのです。中でもクジャクの描かれた名古屋帯はゲストに人気で、ブルー系の着物や振袖にこの帯を選ぶ女の子が多くて、写真のアメリカの女の子も内気なおとなしいタイプでしたが菊が咲き乱れた訪問着にクジャクの帯を締め、鮮やかに変身して柴又を楽しみました。着物には、帯にはそれぞれ物語があり、魂があります。惜しげもなく大事な着物や帯を頂き、本当に感謝しております。そしてこの帯を選んで締めてくれるゲストたちの物語が、帯の中にどんどん織り込まれていくのを、私は不思議な気持ちで眺めています。