夢のような

 天気と光の加減もあるのでしょうが、この美しいたおやかな母子のゲストの写真を久しぶりに見て、その温かさに神々しささえ感じて見とれてしまいました。エアビーも四月三日まで閉鎖です。その間何をどうやっていこうか、まず今までの振り返りをしていたら、早速この写真に行き会ったのです。日本人の親子ではこの写真は撮れない。お母さんの知性に裏付けられたやさしさ、温かさが着物につつまれて輝いているのです。大学の先生で、時々メールや電話で仕事しながら「sorry」といったり、年相応に活発な一人娘さんにおみくじの英語読ませたり教育ママもしながら、いとおしげにちょっと悲し気に見守る佇まいは見事でした。

 観光で私服の写真はたくさん撮っているでしょうが着物着て髪をアップにしてお寺の庭や仏像や彫刻を見る姿を私が見ていて、撮ったこの写真はもし私に絵が描けるなら描きたい絵なのでしょう。

 村上春樹の「騎士団長殺し」では高名な画家の書いた絵に触発されて、主人公の肖像画家が自分の本当に描きたい絵が描けるようになったのですが、それを読むたびにその絵を描く衝動とか思考の経路とか、そう、メイクアップアーティストのカズ・ヒロさんもそうでしたが、とことん入り込んだ後に出来たものの凄さをまねしたいとかいうのではなく、皆さまから頂いた着物とそれを着たゲストと、仏様の気配のするお寺で何かを感じ佇むゲストが存在してほしいと思うのです。

 フランス人の男性が結城紬を染め直した着物着て、可愛い小紋着たガールフレンドと写真を撮り続け、翌日も柴又に行きたいと言っていましたが、そういう気持ちになってもらえるようにこれからはアピールしていきたい気がします。私もゲストも皆同じところに立ち、着物という優れた媒体を使って美しいものを作り出す。夢のように。

 今日姑を根津の病院まで電車で連れて行ったのですが、金町行きの電車に乗っていた体格の良い女装したショートカットの男性をずっと見ていて(失礼)この方に私の現代風な加賀友禅着せたら似合うだろうなと思いました。あれが着こなせる方女性ではいないのです。そういうことなのです、私のこれからやりたいことは。そして、それは夢のようなものです。