Adam Isfendiyar アダムス

 娘から、うちのエアビーの体験の動画や写真を撮ってくれたカメラマンのアダムスの記事と彼の写真が、BBCのニュースに出ていたと連絡があり、早速見てみました。彼は今ロンドンにいるのですが、ロックダウンされて仕事もキャンセルになったので、ボランティアで家にいる人々の写真と文章を書くことをはじめ、それに参加する人の募集もしているのです。キプロスで生まれ、ユダヤの血もひくと言っていたアダムスがうちに来たのは二年前で、娘や知りあいにもゲストの代わりに”サクラ"で参加してもらい私の体験を再現してそれを動画や写真に撮ったのですが、私は動きが速すぎるとかしゃべり方が(英語です)良くないとかしょっちゅう彼に直され、もうめちゃくちゃになってしまい、私を撮らないで他の人を撮ってと頼んだら、これはあなたの体験なんだからあなたを撮ると強く言われたことを思いだしました。まだ夢中で外国人の相手をしている頃で、外国人に扮した娘に着物を着せお茶を点て、柴又の案内をしたのをずっとアダムスは撮影したのですが、あとでアダムスのインスタグラムを見たらわりと暗めでハードな写真が多く、ホームレスやアイヌとか日本での写真も特殊なジャンルを扱っていて、エアビーの仕事とはいえ訳も分からない日本のおばさんを撮るのは大変だし意に沿わないことも多かったろうと申し訳なくなってしまいました。

 しばらくしてできた動画や写真を見て、モデルが私と娘だから、他の着物体験のサイトに比べ華やかさに欠けて地味な印象を受けるのですが、動画にしても着物を着せたりお茶を点てる抹茶の緑の映像やシャカシャカという音、帝釈天で手水を使う柄杓のアップとか、写真もアダムスらしい感覚でチョイスしてあってさすがでした。

 極めつけが初めに出した写真で、ウェストベルトを締めようとしている私の手の大きさと、無意識に手を握っている娘の左手の表情が、アダムス好みのようで、他の写真も私たちの手が帯締め選んだり、お守りを買おうと探したり、お茶を点てたり動いているのを静かに撮っていて、今見てるといたるところにアダムスの視線を感じます。写真撮った後もアダムスはその頃好調だった株の話を主人としたりして、日本人特有のためらいや恥じらいがない私たちはいろいろアフターを楽しみ、柴又にまだ残るという彼と別れたのでした。

 今コロナウィルスでエアビーもすべてがストップしていますが、アダムスが彼のブログに書いているように「現在起こっていることは世界中の誰もがつながることができる出来事であり、共通の事態、環境circumstance」なのであれば、それに対して皆同じ土俵で考え合い助け合い感じ合っていくことが可能だというまれにみるチャンスなのです。カナダ、ロシア、アメリカ、タイ、ペルーといろいろなところにいるゲストに情況を尋ねるメールを送っています。感染してしまい一か月アパートに籠っている女の子、ロシアの空港に勤めていたけれど職を失い、これからの人生を構築しなおすという女性、夜間の外出が禁止されて患者数も減り、体を休めることが出来るというタイの女医さん(去年結婚したと写真を送ってくれました)など本当に悲喜交々ですが、2022年までは混乱が続くだろうということを覚悟して、やはり自分のスキルを高め続けて、ポジティブにやれることを考えていかなければなりません。会話だと私の言語能力に限りがあるので発展しないのですが、メールであればいくらでも調べられるので細かいことがわかります。みんなぎりぎりで暮らしているのですが、体の中に色々な引き出しや蓄積がある人の紡ぎだすものは、いままで見たことのないものになるのかもしれません。一人で籠って仕事している彼女たちのことをいつも思い、エールを送っていますが、地理に弱い私は世界地図をひろげ、天眼鏡でゲストの住んでいる街を一生懸命探しています。

 「ペルーのサンボルハ?」どこだそりゃ?!