The Turblent Times

 今、二十人以上のゲストにメールを送って最近の様子など聞いていますが、gメールだとなかなか見ないようで、五人送って一人が返してくれればよいほうです。思いがけないゲストからのメールにびっくりしたり、似た名前でどなたか暫し考え込んだり、日本語で書かれていたり、可愛い日本のスタンプが押してあったりさまざまで、思わず笑ってしまいました。

 トライアスロンをやっているメキシコのMinervaからのメールに"in this turbulent  time"とあって、意味がわからないので調べたら「激動の時代」とあり、波乱とか不穏とかの意味もあるようで、まさにその通りです。星占いとかみると、今年は本当に破壊と再生の年だそうで、これまであった社会の枠組みがいったん解体される一年だからこそ、過去のものにしがみつかずに未来を見据えた視点をベースにして計画を立てていくことが大切と書いてあるのです。

 私のところに返ってきたメールはフィンランド、USA、メキシコ、ドイツ、オーストラリア、カナダ、タイ、ロシア、イスラエルそしてスイスなのですが、感染者数も横ばいになってきて落ち着いてきたところもあれば、狼を飼っているお兄ちゃんは自宅で仕事しているというけど、広大な敷地だろうし、それでも家の中でおとなしくしているのは変わらないようです。「不思議な時間ですが、何よりも健康です」と書いてきたフィンランドのAnnina は国連大学に行っていたと言ってたけれど、今はフランスで働いているそうで、日本語が上手で不思議な雰囲気を持つ女の子でした。スーパーで働けるからラッキーというオーストラリアの学生Toriは節分の時きて、恵方巻を食べた子でしたが、その時のことがいまとなっては夢のようです。

 日本文化オタクで、黒澤明から小津安二郎、そして仏像までいろいろ知っていたアメリカの男の子たちがこんなメールをくれました。

 ”The world may feel upside down,but one thing that has stayed the same is your warmth and kindness."

 水泳の伊藤華英さんが 十代の頃世界のスイマーたちと一緒に過ごした時、ある選手が自分の国の政治、経済、宗教について語り始め、それを聞いても伊藤さんには語る言葉が全くなかったのがショックだったと言っていました。ゲストと政治や経済について話せるのは主人で、株で苦労しているので乏しい英単語でも身をもって切実に世界経済を語っています。私は宗教や文学など頑張って話しますが、こんな会話を日本人とすることはまずないし、徴兵制のある韓国や、共産圏の国から来たゲストの緊張感とか今まで知らなかった様々なニュアンスを学んでくると、今回のコロナ危機も見方が変わってきます。ルーマニアのゲストが日本人は静かで騒がないし綺麗好きで、自転車やバイクが庭先にあっても盗まれないのは凄い!と言っていたのですが、言い方を変えれば無防備で危機意識がなく何も考えていなかったのです。

 会話は難しいけれどメールだと細かいことも聞けるのですが、聞きたい内容を私がきちんと把握しているかどうか怪しいもので、だから水泳の伊藤さんが今のこの時期、自分を取り囲む環境を見直し、世界をより知りながら自分の意見を持ち、諦めず今できることをやっていきたいと言うのがよくわかるし、本当にこのチャンスをしっかり自分のものにしなければ、次の時代に生きていく資格がないと思っています。今手ひどい教育をされているけれど、これは私達のためになることとしか思えません。

 生きていて幸せだと今思います。こんな辺鄙なところまではるばる来てくれた沢山のゲストたち、縁あってうちの着物を着てくれ帝釈天のお寺をじっくり味わい、私の点てたお茶を飲んでくれたみんなが幸せでいてほしいと切実に思うし、もしまた外国人が来てくれるようんなことになるなら、もっといろいろなことを一緒にしてみたい、着物、料理、自然、文化。コロナ危機を経て、ウィルスとも共存できうる知恵と愛情を持つために、この無為の時間( Inaction)を目一杯使っていきます。