オペラ座の怪人

 フィギュアスケートの試合でよく使われていた[オペラ座の怪人]の映画を夜やっていて、音楽は知っているのですが、内容はわからないので録画しました。知っている音楽が多いので面白く見たのですが、一番感動したは醜い顔を仮面で隠したオペラ座の怪人に、ヒロインの女の子が慈愛に満ちたキスをするところでした。最後は彼女は幼馴染の恋人の男性と一緒に去っていくのですが、その前に小さい時から醜い顔ゆえに見世物小屋でさらし物にされ、苦しめられてきた怪人の仮面をそっと取り、その心をマリア様のような大きな愛で受け止めてあげるのです。今まで誰にも愛されたことのない怪人が、どんなに嬉しかったことかと思うし、心からの愛を知ったということを支えに怪人はずっと生きていけるのでしょう。一筋の光を見たということで、人間は救われるということを読んだことがあります。

 実は義父の口癖は「器量の良くない子は一生不幸だ」というもので、そんなことを言うのなら私は一生不幸なのかしらと思っていました。生まれた時の可愛さで一生が決まる?と断言する義母は、可愛くなかった孫の結婚式には出なかったり、特に私の娘のことは小さい頃から嫌っていて無視し続けていました。子供たちはそれぞれ独立して家には戻らなくなり、一見平和な私たちと義母との静かな生活が続いていましたが、認知症がひどくなり、ショートステイに行きだして週末いなくなってから、夫と出かけたりお客様をお呼びしたりできるようになったし、昨日京都へ仕事に行った娘がお土産持って届けにきてくれました。コロナ禍の混乱の中で、苦労しながらやっと自分の道が定まってきたという娘は生き生きして明るくしっかりしてきたのにくらべ、楽しいことが何もなく、ただ闇の中を暗く進んでいるような義母を見ていると、ここまで来るのに随分長い時間がかかり、つらい思いも多かったけれど、人間にとって何が大切かわかってきた気がします。

 夫が娘が帰るときに、「大事なことは忍耐と感謝と温かい心だよ」と言っていましたが、義母の弟の会社仕舞いのために熱い中苦労して動いている人たちに感謝するどころか罵倒しているおじと、黙って粛々と事を進めている方々の姿を見ている実感なのでしょう。

 顔が爛れて醜い姿のオペラ座の怪人の、真の魂を見て、温かいキスを二回したヒロインの美しさを、忘れないでいようと思います。