世界はほしいモノにあふれている   The world is full of things you want

 昨日NHKテレビで放映された「世界はほしいモノにあふれている」で”ロンドン着物スペシャル”というタイトルの特集をやっていて、とても刺激的な内容でした。イギリス出身で着物研究家のシーラ・クリフさんが、斬新で素敵な着物姿でロンドンを闊歩し、着物のお店を巡り(外国人がオーナーです)ロンドンのミュージアムで開かれている着物展に行ったり、パブでビール飲んだり、楽しんでいるのですが、今や、世界中にボーダレスに拡大している着物ファンが存在し、それぞれの楽しみ方で生活の中に着物を取り込んでいることに驚かされます。着物と洋服を距離を置いてみているのは日本人の固定観念かもしれないし、決まりにのっとってきちんと着せていないと着付けのおばさまたちに因縁付けられることが、外国のゲスト連れて歩いて居るときも結構ありました。(ピアスしている、スリムな男性のおなかにタオル巻いていない)そんな中で、好きな着物の組み合わせをして帽子をかぶり、サングラスしてヒールの靴を履きロンドンを歩くシーラさんはカッコイイし、それを見ていた日本人の女の子が、だから私も着物着るとシーラさんに着物の着方を習ったそうです。シーラさんは大学教授でもあり、着物と社会のかかわりとか、日本で伝統的な着物産業に携わる人や海外の着物コミュニティまで、沢山のキーパーソンに聞き取り調査をして分析した「着物は今どんな位置にあるのか!?」を丁寧にまとめた本も書いています。平安時代からの着物の変遷や現代の著名な友禅や織・組みひもなどの作家の仕事も紹介しながら、現代の着物事情をダイナミックに伝えていて、着物を作る人、売る人、着る人、そこには日本であれ海外であれ、大きなムーブメントが起きているし、例えば、日本では若い作家さんたちが育ち着物を自分のファッションとして晴れの舞台だけではなく、普段使いとして身に着けて楽しんでいるのです。(娘は最近車の免許の書き換えに行った時、今風の袴を穿いていったとか)今や海外でも日常生活の中に着物ファッションを取り入れている人は大勢いて、私もゲストたちに羽織などたくさんの物をプレゼントしてきましたが、黒羽織をカッコよく羽織る外国人をテレビで見て、嬉しくなりました。袴は卒業式、振袖は成人式、そういう時代はありましたが、コロナ以後は団体で動くことが危険ならば、個々人が自分の着たいときに工夫して着ていくようにしなければならないし、そのためには自分で着るとか着物についての知識を自分で学ぶことが必要でしょう。

 葛飾区の観光課に私のフライヤーを渡したいとの連絡があり柴又に久しぶりに行きましたが、雨が降っていてお店もずいぶん閉まっていて静かでした。ゲスト連れて参道歩いている時、必ず「ビューティフル!」と声をかけて下さる民芸店のオーナーと、もう再びあのようにたくさんゲストを連れて着物着せて歩く日は来ないという話をしました。もうあれは過去の話、決してコロナで中断しているわけではないと私は覚悟決め、次に進んで行く道は、日本人の若いママたちとその子供さんに着物に馴染んでいってもらい、文化を楽しむことだと思っています。

 外国人は着物も日本の文化も知らないと考えて居たことは大きな間違いで、ロンドンで着付けしている日本人もいるし、オンラインで世界中に浴衣の着付け教えたり、アンティーク着物を販売する外国人もいるのです。面白かったのはそこでは野良着のボロが人気で、もっとぼろいのはないのかという男性客もいて、生活や暮らしの染みついた着物?に深く興味を持っているようです。今大人気の鬼滅の刃も大正時代の着物姿が出てくるし、市松模様の羽織や帯はインパクトがあって、作者は着物が好きなんだなと思うし、そういう積み重ねがこのアニメの人気につながるのかもしれません。うちにある各地から頂いた沢山の着物を生かして、若い世代に楽しみ方を伝えていくのがこれからの私の役目かなという気がします。