着物たちの悲しみ

 夫の仕事仲間の先生の奥様が、先ほど亡くなられたと連絡いただきました。たくさんの着物をいただいたのが一か月半前、それからすべての帯と着物を組み合わせてボディに着せて写真撮って、振袖の帯も娘が綺麗に結んでくれて、先だって来たヤンママもこのさくらの模様の着物が良く似合って、これを着る練習をしようと言っていたところでした。

 お宅に伺った時ずいぶん痩せてしまわれたと聞き、その後どうなさっているかと案じていたのですが、とうとう逝かれてしまいました。ご家族、愛妻家の御主人の悲しみはどんなにかと思うと、私たちも胸の詰まる思いですが、頂いた沢山の着物たちのことを考えた時、着物たちの方がどんなに悲しいかどんなにつらいか気が付きました。何十年も奥様とともに暮らし、日々の喜びや悲しみを共にし、寄り添って暮らしてきた着物たちは、一か月半前にどんな思いで奥様の元を離れて私のところにやってきたのか、その気持ちを考えたことがありませんでした。どの着物も新品の様であまり着てはいらっしゃらなかった気はするのですが、たとえ着てなくてもこれらの着物は奥様そのものであり、奥様の魂だと思っています。何で私のところへ来たのか、奥様が私に託して下さったこの着物たちをしっかり着ていただきましょう。  着物はずっと生きています。