蘇州刺繍

 先だってたくさん頂いた着物の中に、蘇州刺繍の薄紫の一つ紋の訪問着がありました。たまたまうちに来ていた鬼滅の刃ファンのヤンママが、「綺麗!」と言って羽織っていましたが、しつけが付いていて着たことがなかったようでした。汕頭刺繍かしらと思って着物の裏を見たら、「蘇州刺繍」と刺繍されてあって早速調べたら、中国三大刺繍の一つで非常に歴史も深く、およそ2500年前呉の国が都を蘇州に置いた頃から刺繍が盛んに行われていたそうです。古くから絹織物と養蚕業が盛んであった蘇州ではシルク製の刺繍工芸が発展していき、その糸はそのままの太さで使うことはほとんどなく細くほぐして使い、髪の毛よりも細い糸を縫い重ねることで、繊細な作品へと仕上がっていきます。このような細い糸を扱うのはたいへん難しく、力を入れすぎては切れてしまうし、弱ければうまく作品が仕上がりません。高い技術力が要求されるのだそうです。

 そして今日はヤンママのお嬢さんの七五三で、親子三人の着付けをしましたが、本当に久しぶりの仕事で、旦那様用のアンサンブル、奥様の訪問着、お嬢ちゃんの着物と用意しながら、必死でシュミレーションをしていました。お嬢ちゃんが細くて、帯が付け帯で、かつとても活発なのでハラハラし通しで、神社にもついていったのですが、ヤンママのご両親やお姉さんも来ていて、温かい日差しの中でみんなで写真を撮っている姿見て、ほのぼの幸せでした。一つの家族だけではない、沢山の方々の思い出を秘めた品々を使いこの七五三の着付けをして、私は今までに味わったことのない強いオーラを感じていました。コロナ前にした七五三の着付けとは全く違うのは、ここに集っている方々の強い個性や思いなのかもしれませんが、神様のいらっしゃる神社に集い、喜びを分かち合っているこの家族のスピリチュアルな何かは、私の着物たちをよりいろいろな所に連れて行ってくれる予感がします。

 それにしてもずっと心配し続けていた行事が終わり、ほっとしています。鬼滅の刃の映画を見に行き、神奈川の山奥の両親の墓参りに行き、夫の誕生日を祝いに銀座にランチを食べに行きましょう。マスクして着物着て、そして帽子被って、銀座歩きしてみるのはどうでしょうか?やってみます。