夜は明ける。 想いは不滅。

 週末に衣装合わせの為の着物を取りに来ると言っていた娘が、今日の新聞全紙に、鬼滅の刃の全面広告が出ているとラインしてきました。アニメ本は一億冊突破だそうで、凄い人気です。映画も一回目でなく二回目の方が感動すると言うので、もう一度見なくてはなりません。

 日経新聞の世界経営者会議のページに、いろいろな企業のリーダーのコメントが載っていて、ネットフリックスCEOのリード・ヘイスティングス氏が脱ルール経営を進めているのですが、優秀な人材に命令系統は必要なく文化や価値観で管理できるし、誰もが自分で意思決定をし変化を起こしたいのだから、創造性が求められる組織では命令より刺激を与える方がアイディアが生まれやすいと言います。同じ紙面にデザイナーのコシノジュンコさんのコメントもあり、「コロナウィルスによってファッションの意義が問い直され、アパレル産業は過去の成功体験を捨て去らねばならないこの「鎖国」の時代に、私たちは日本独自の文化を深く理解し、次の挑戦に向け力を溜めなければならない。厳しい状況だけれど、文化が経済を生むことにつながるし、若者は世界に挑戦する気持ちを持ってほしい」といっています。コシノさんは11月に銀座の観世能楽堂で宗家の観世清和さんと能とファッションを融合したイベントを開催して、伝統的な美や能の芸術性を表現したそうですが、コロナ前に能楽男子というグループが能を若い感性で演じたり、日本文学の朗読劇をしたりしていたと、かかわっていた娘が教えてくれました。外国からたくさんのゲストが来ていた時期を経て、今の鎖国の時代に入った時、新鮮だと思い刺激を受け新しいものを創り出せるのはやはり若者だと思います。鬼滅の刃がヒットするのも、その中に盛られた家族愛や人を守ろうとするひたむきさを感じとれる幼少時の文化体験や価値観の蓄積から来るものかもしれません。戦争中女学生で東京にいた母は、何度も空襲にあい、防空壕に飛び込む生活を送っていたのですが、最大級の空襲が来た時に、二つ並んでいた右の防空壕に飛び込んだ人達は爆破され、母は左に入ったために命が助かったという話をよくしてくれました。とっさに右に入るか左に入るか決めるのは、もう運命でしかないのだけれど、人の一生にはそんな命がけの選択があるということ、すべて自分の判断であり責任である、自分の命を守るのは自分自身でしかないのに、政府がこういったああいったからこうなったと人のせいにばかりしていたら、そして自分で決めないのなら、海に落ちてしまっても仕方ないのでしょう。

 これからは仕事も生活も生き方も、右へ行くか左へ行くかという選択を瞬時にしなければならない時代になると覚悟しています。共に生きていく価値観とか、物事の本質に向き合い、原点から考え、そして考え抜いて戦うことができ、文化を感じられる感性を持ち、答えを出すだけではなく、問いは何かを考えていくことが今一番重要なのだと思います。着物に関して今できることを、いろいろ考え、若い層から刺激を受けながら進んでいきたいのです。新聞の鬼滅の刃の全面広告の見出しの言葉は、こうでした。

      「夜は明ける。想いは不滅。」   想い続けて、進みます。