混乱の時代に、川を越える

 このところいらっしゃるお客様や着付けを習いに来る方々は、個性が強く、濃い生き方をしていて、これまで会ったことがないタイプだったりして、今週は三日続けてお話したり着付けお教えしたりしているのですが、さすがに今日は疲れてしまいました。私も個性の強い変わり者なのですが、お会いしている方の送ってきた人生の軌跡が想像が出来ないというのは初めての体験です。皆さん着付けを習うにしても熱心で、昨日も時間オーバーしてしまい歯医者さんの予約をしていたのでぎりぎり駆け込んだのですが、最後の質問に答えられなかったことが悔やまれて、麻酔して歯を削りながら考え続けて解答が出て、ほっとしました。今まで来た方々とは何かが違う、求めて居るものが違うという気はずいぶんしていましたが、今日きた鬼滅の刃ファンのヤンママが、今はお正月にお嬢ちゃんと着物着れるように頑張っているけれど、その後はどうモチベーションを持って行こうかとふと漏らしていました。

 今日は12月15日、射手座の新月で、今日から新しい時代に突入すると星占いにもあり、これからは毎日が決断と選択の連続だとか、待ったなしの生活をしていかなければなりません。火の時代、地の時代を経て、これから突入する風の時代では、独創的な個人、自立した個人が魂の才能を発揮して創造的な世界を生み出す時で、皆のオリジナリティが劇的に世界を動かしていきます。いつも前を向いて人生における新しい選択肢を持つことに心を開き、もっと自由に、自分を犠牲にせず、なりたい自分になることが大事だそうです。

 そしてもう一つ、豊かな知識はこれからの時代、どんな財宝にもまさる価値となるのですが、本当に大切なのは知識そのものに関する理解を深めておくことで、古代ギリシャでは知識を三つに分けていて、言葉を通して受け取る知識、人間の理性に働きかける知識をマテシスといい、人間の言葉を越えた天からもたらされる知識、多くの場合瞑想などを通じて啓示的に与えられる知識のことをグノーシス、言葉と言葉の間から感じ取る知識、行間を読むことではじめて受け取れる知識、言語を超えた波動としての情報も含めた知識をパテシスと言い、これら三つの知識を自分の中で統合して初めて理想的な人間になれると信じられていました。これらの知識のトリニティが新しい時代を生きる力になる。(でも最後のパテシスは難しい・・)

  平成26年に夫は整骨院を辞めたのですが、大きな看板と玄関前のパネルがまだそのままで、たまにまだ仕事していると思われたこともありました。でも今日のこの日、看板のポールを切り、診察時間など書いたパネルを削って上にシートを貼り、整骨院という文字が全部なくなりました。戦後大変な苦労をしてこの整骨院を築き上げてきた義父が亡くなって十年、もし蘇って看板のない空間を仰ぎ見たとしたら何というかと思います。厳しく頑固でしたが「判断を間違えるな」とか「何がいいか悪いかは、結局わからない」とか、含蓄のある説教もずいぶんしていて、一緒に暮らしていた私たちは本当に大変だったけれど、今は諭された言葉が子供たちの中にもしっかり染みついているのです。偏見や固定観念のない新鮮なまなざしで世界を眺め、この混乱の時代に川を超えろ、川を渡る経験によってはじめて時代の本質を理解し、時代を動かす普遍的なシナリオを引き出すことが出来るのかもしれません。依存するものが完全になくなった時にはじめて人間は本来の力を発揮できるように創られている、本当のチャンスは何かが壊れたあとの瓦礫に中にこっそりと隠れているものなのであれば進んで行くしかないのです。 

 五十年の間どれだけ多くの人たちがこの整骨院を訪れてくださり、骨折を直し元気になられたことか。そしてエアビーの仕事を始めて二年あまり、沢山の外国人もこのうちを訪れて楽しんでくれました。コロナウィルスはまた新たな局面を私にもたらしてくれていますが、今できた空間を整えることで、新しい縁を増やし結んでいける気がしています。決断と選択。一つ一つ大事に考えていきます。