The time has come

 最近激しい雨が降った翌日は、良い天気になるというパターンが続いています。しばらく自宅で謹慎していた義母も昨日からショートステイにお泊りに行ったし、肩の荷が下りた静かな日曜日に、三月から新しい仕事場で働いている娘が、久しぶりに帰ってきました。才気あふれる着物デザイナーさんの自宅兼アトリエで、今は色々雑事をこなしているのですが、会社勤めの経験も役にたっているとのこと、でもやりたい事もやっていいのよといわれるのですが、そうなるとと何ができるか考えてしまうし、今のところは天才タイプのデザイナーさんんのカオスの中から創造していく着物や浴衣や帯の数々の製作現場を、唖然として見ているようです。

 生きるのが不器用で、愛想のないタイプの娘が、自分の目指しているテリトリーにいられるのに、なぜか混乱しているのは何でだろうと思うのですが、自分の生まれ持った裁量では勝負する力はない気もします。ただ娘と話していると、際限なく話が広がり、能から歌舞伎から、映画からアニメから、多方面にわたっていて、今上映されているシン・エヴァンゲリオンにもデザイナーさんは関与していて、監督の庵野秀明さんのことも熱く語っているのです。今はもう、デザインとかモノつくりは、明確な思想を持てるかという所に来ているのなら、まだ何かは作れなくても着物という媒介を通して熱く語る思いを娘は持ち合わせているのでしょう。

 ネットでひどくたたかれ、庵野さんは自殺を何回も考えて、ひどい鬱になった時、助けてくれたのは奥様のモヨコさんの温かい愛情だったそうです。相変わらずコロナ感染は広がっていて、どうなるかわからない世の中で、すさんだ精神になるのは、顔を隠して人を貶める輩だろうし、彼らは終わりはないコロナの恐怖と心理的圧迫に一番堪えられないでしょう。いくら待っても、いくら我慢しても、助けは来ないとしたら、今私たちに必要なのは、自分の方法で、絶対的な一つの答えを持って、すべての疑問を解いていくことです。

  コロナでリセットされて皆が同じスタートラインに立ったとすると、進んで行くエネルギーは人間にも自然にも、いろんなものに対して愛を持っていることで、愛があるから、苦労をエネルギーに変えられる。愛がない人は苦労すると人生の迷い道に入り込んでしまったりする。・・不器用な生き方が一番遠くまで行けるということ、私にとって嬉しい指標です。

 自分で自分の心を燃やすこと。自分の意思を持って、自分の心と対話し、自分の心を整える。答えは自分の心の中にある。人生の真理は,陽の当たらない海底にあるのだから。本来、植物は土や木の持つ力だけで十分に育つと言います。人間も、訳のわからぬ心配と焦燥に駆られて、人と同じ道で争うための準備のみをしていると、その道が通行止めになった時の対処が出来なくて右往左往してしまいます。そうならないために、いつも自分自身に問題提起をして、その問題を解決するために今日を頑張る。すると次の問題が出てきて、明日はそれを頑張る。そういうふうに毎日、脱皮を続けていく。・・疲れていてももっともっと前へ。だから倒れるときは前へ倒れる。 深刻になるわけでもなく、明るく前に倒れたいと思うのです。真理を求める心をひたすら見つめれば道は見える。自分自身を光として歩め。

 「きっとできる、不可能はない」という自信が、古くからあるものや伝統を進化させ、発見を生む。常識やジャンルといった壁や枠を飛び越えることができる人だけが、新しいジャンルを創造していくことができる。安定した人生より、挑戦し続ける人生の方が楽しい。できるという可能性が1%でもあったら、迷いなく一歩を踏み出す。皆誰しも、胸に苦しさや辛さを抱いてそれぞれの人生を生きています。でも、どんな理由であれ、それを他者に向けてしまったら、自分の中の苦しさや辛さは軽くなるどころか倍増していきます。自分以外の誰かを思いやったり、手を差し伸べたり、今日という日を平和に過ごせたことを幸せだなと感じることでしか、それを軽減させることはできない。

 娘と話していてびっくりしたのが、周りのお友達で離婚した人が多いということで、街中を花嫁姿で歩いたりしたほのぼのとした結婚式の様子を聞いていたので、ため息が出てしまいました。コロナが原因ではないのでしょうが、旦那様の精神状態が追い詰められてしまったこともあるようで、これからまたどんな状態になるかわかりませんが、精神を強く持ちやはり前を向いて進んで行くには、いくつかの選択肢のあるある程度ゆるい生き方も必要でしょう。着物業界の中で、エヴァンゲリオンを理解し、熱く語れることが、販売促進につながり、新しいものが出来ていくなんて、胸が躍ります。