三人の着物姿

 今日は朝から日差しが強く、袷を着て長襦袢を着るのは辛いかもしれないと思い、急いで単衣の着物を出し、帯も薄いカラフルなものを準備して、ゲストを待っていました。この感覚、本当に久しぶりですが、時間少し過ぎて三人の女性がうちの前を通り過ぎるのを見てもしやと思い「Sarah!」と声をかけたら、どんぴしゃり、ゲスト達でした。日本にあるイタリアのアイウェアの会社で働く中国人二人と同僚の日本人の女性は、港区世田谷区そして川崎に住んでいて、麹町の事務所に通っているそうですが、京都で買ったという着物を二枚持参したSarahは、それをさっそく羽織って見せてくれました。でも彼女は手足が長くてちょっと着物が短めなので、うちにある着物を着てもらうことにしたら、やはり豪華な訪問着や付け下げに目が行って、三人で着物を次々出してはおり始めました。

 中国からの旅行者が三人来ると初めは思っていたので、かなり心配していたのですが、日本で働いている同僚たちということがわかり、ほっとしました。勿論注意はしなければならないのですが、いつものように着物を見せるとやはり鮮やかな上質な訪問着や付け下げ、そして私の秘蔵の袋帯を選び、綺麗だと喜んで写真を撮っています。ヘアは自分達で簡単にアップにして簪を挿し、割とスムーズに着付けが進んでいる最中に雨がひどく降り始めたのですが、それでも外へは出たいというので、止むまでティーセレモニーをしました。Sarahは京都で抹茶や茶碗を買ったけれど点て方や飲み方がわからないとのことでしたが、同僚の日本人の女の子もわからないというので、時間があったらまた来てくれれば、お茶や着付けを教えますと伝えました。日本で働いているのなら、そういう文化を簡単に教えられるというのがこれからは必要だし、着物も帯もたくさんあるので、持っていないものは差し上げられるのはいつもながら私の強みです。

 雨がやんで出かけた柴又は、日曜日なのに閑散としていて、お寺の本堂には入れないし、門も一つしか開いていないし、景観が綺麗な山本亭も11日まで休みでびっくりしながら、本当は出かけないでうちにいなければならないと思い出しました。コロナ前のように着物着て柴又散策に出かけても、行けるところは限られてしまうし、お店も今までのように入っていいのか考えてしまうし、これからはやり方を変えなければならない時期なのでしょう。若いから大丈夫と思って江戸川の土手まで歩かせてしまったし、私のミスで電車一台乗り遅れてしまったし、本当に申し訳ないことをしましたが、帰り際のおみやげタイムではかなり長考の末、素敵な羽織を三枚持って行かれ、オフィスで着ようと言ってくれました。実はこれらは着付けを今習っているヤンママが好きな羽織たちばかりで、差し上げたことを後で知ったら嘆くだろうなとは思ったのですが、彼女達はヤンママのセンスと同じなんだとわかったし、着る場所が高砂にとどまらず広がれば見て下さる方も増えるし、うちから旅立って行った羽織たちを私は祝福したい気持ちなのです。

 久しぶりで細かいミスが多くて、反省材料がたくさんあります。でも、駅での待ち時間にSarahが話してくれた大学での軍事教練の話が面白くて、手足の長いSarahは皆と歩調をそろえて上手く歩けず、教官に注意されたと笑いながら言っていましたが、学校で軍事教練するんだと私は驚きました。もし電車に乗り遅れなかったらこの話は聞けなかったし、さすがに特殊な単語が多かったので日本人のKyokoさんがすぐ日本語に訳してくれてわかった内容なのですが、きっかけさえあれば、後はネットでいろいろ調べられるし、この世の中制限だらけだけれど、糸を手繰り寄せればいろいろな所へ通じることが出来るのを忘れていました。世界は広くて複雑で、そして混乱しているけれど、今だからこそ知らなければならないことを深く考える時なのです。出かけられないと嘆いている暇はありません。

 Michaelからワクチン打ったかと聞かれ、まだ返事のメールをしていませんでした。Sarah達のことも知らせてみましょう。