最近、森山直太朗の古いアルバム「新たなる香辛料を求めて」を、着物の整理をしながら良く聞いているのですが、その中の”声”という曲が好きで、聞くたびに切なくなります。

「あなたが眠る場所へ  あなたが眠る場所へ帰ろう  夜が明けてしまう前に

 あなたの歩む道と  あなたを育むものすべてが  どうかいつも輝かしくあれ

 あの夏の日  風に吹かれ  雲に焦がれ  あなたはどこに

 ああ愛とは  ああ愛とは  何も語らず  静かに肩にかかる雨  

 今 私の胸のうちに息衝くのは  確かな誇り

 ああ あなたが ああ あなたが 今日もどこかで 真綿のように 生きているということ

 この声が この声が いつの日にか あなたに見える日まで  光の庭で 永遠に唄うよ」

 

 昨日は夫の友人が夕方遊びに来て、いつもなら外へ飲みに行くのですが、緊急事態宣言で飲み屋さんは皆閉まっているので、おつまみやお酒をたくさん買ってきて、離れて座りながら家飲み会を始めました。私も久しぶりにビールやレモンチューハイを吞んで酔ってしまいましたが、隣の焼鳥屋さんで焼き鳥を買い、テイクアウトのお寿司も買ってきて、気を付けながら楽しく過ごしていると、ドイツのマニュエラとピアニストのクリストファーの奥さんからメールが届きました。みんなよその国の現状はわからないから、住んでいる人に聞くのが一番早いと直接安否確認をしてくれるのですが、ドイツのマニュエラの息子の身長2mのポールは日本が大好きで、また来たくてたまらないとのこと、そして今度は弟君も同行したいそうです。2mのドイツの若者が二人、うちの玄関に現れることを想像すると、恐ろしい気がするのですが、意外と早くその日が来るかもしれません。

 そしてソロモン君という可愛い赤ちゃんを産んだクリストファーの奥さんは、パンデミックの時私たちのことを心配していたとのこと、赤ちゃんと三人で、日本に行ける日を楽しみにしているというメールを読み、添えられた夫婦の写真を見ていると、二年前浴衣を着てサングラスをかけてはしゃいでいた姿を思い出します。甘党のクリストファーは抹茶かき氷にたっぷりシロップをかけて食べていましたっけ。

 あの時の声が聞こえます。あの日のことを思い出すことが出来ます。英語で話すから、わからないこともたくさんあるし、うまく意志が通じない時もあるのだけれど、皆の声が、今聞こえるのです。そしてそれが、この出口のない世界での、救いの声のように思えるのです。みんな家族の愛情に包まれて、この大変な時期を乗り切ろうとしている、近所に住む人々、世界中に住む人々、気持ちが落ち込んでどうしようもなくなった時、どうしていますか?私はここに居て、あなたのことを思っていますよという声が聞こえることがどんなに支えになる事か。

 春夏秋冬、たくさんのゲストが来て、沢山の声がして、沢山の人がうちの玄関に佇んで、みんなで時を過ごしたことは私たちの誇りであり、愛でした。それを支えとしてくれる人が世界中にいるということが、私の支えです。

 たくさんお酒を飲んでいい気持ちになった夫の友人は、酔った勢いで「ショートヘアが良く似合いますよ」と私に何回も言って帰って行きました。声が聞こえるということ、声が見えるということ。みんな、また会える日まで、何とか頑張って生きて行きましょう。