半夏生

 今日は半夏生だから、蛸を食べましょうとスーパーで宣伝しています。稲作などの農作業が生活の中心だった日本で、半夏生はとても重要な日で、夏至から11日目と決まっていました。半夏生は、昔から田植えを終える目安の日とされていて、半夏生が来ると農繁期(農業の忙しい時期)が終わるということで、昔の人は、半夏生を目途に田植えなどの農作業をがんばり、半夏生を迎えるとゆっくり休んでいたのだそうです。昔の日本は、稲作中心の生活でしたので、半夏生はとても大事な日でした。

 子供の頃、住井すゑさんの書かれた「橋のない川」という本が大好きで、奈良の被差別部落に住む農業を営む家族の長編小説なのですが、差別を受け苦しい生活の中でも日々の暮らしを大事にしていて、半夏生という言葉もこの本を読んで覚えました。地方によってその日に食べるものが違い、関西は蛸ですが、うどんやサバ、小麦で作った餅を作るところもあるそうです。

 このところずっと強い雨が続き、明日も明後日も雨の様ですが、足が浮腫んで病院へ連れて行った義母は利尿剤を処方してもらい、今日から三泊四日でショートステイへ出かけ、ほっとしています。歯に食べ物が挟まって取れないと朝から気にして、出かけたくないというのをなだめすかして車に乗せましたが、年取ってあちこち連れていかれ嫌になるとぼやく気持ちもわかります。でも、昼と夜がごっちゃになり、何をするかわからないし、どんなに一生懸命やっても、何もしない義弟と電話で夫の悪口を言うのを聞くのが一番つらくて、ショートステイへ行く車の中で手を振る姿を見ても、何の感情もわきません。今朝歯に詰まったものを取ってと口を開けて見せられた時、その黒い穴のような口でどれだけ毒を吐き続けてきたのかと思うと、身震いしてしまい、よく見えなくてできないと断りました。生理的に受け付けられない。悲しいことですが、どうしようもありません。

 三日間義母がいないというこの空間で、静かに暮らせます。やはり92歳で一人暮らしをしている隣のおばあちゃまの植木のゴミ出しを手伝ったら、お礼にたくさんお菓子を戴きました。仏様に供え、前の電器屋のおじちゃんにおすそ分けしましょう。雨で気が晴れなくても、寄せられた気持ちは本当に嬉しいものです。日曜日には着物を返しに娘が来ます。いろいろな話をしながらゆっくり食事ができます。今日はお風呂にもゆっくり入れます。なんて嬉しいのでしょう。そうそう、今日は半夏生で、ゆっくり休む日でした。