伊調馨さんの着物姿

 今朝起きてパソコンをつけニュースを見たら「伊調さんが着物姿でブーケのプレゼンターに」という記事があり、急いでクリックしてみたら、水色の無地の振袖を着たレスリングの伊調馨さんが、50キロ級で優勝した須崎優衣選手にブーケを渡している写真が出ていて、このオリンピックで初めて見る日本の着物姿があまりに清々しくて、本当に素敵でした。暑いし、無観客だし、そこへ毎回あでやかな振袖姿の女性がメダルを持って並ぶのも無理があるということもわかるので、居酒屋の作務衣風の洋服にサンダル姿の男女が授与式の時出てくるのも仕方ないかなと諦めていました。着物を揃えて着付けして、髪の毛もアップにしてしっかりメイクしたら、時間も人手もかかるしこのコロナ禍では難しいのでしょうが、そんな時不意に現れた伊調さんはショートヘアに紋の付いた水色の無地の振袖を涼し気に着て、国民栄誉賞をもらった時、副賞として授与された袋帯を締めて、本人が着物が好きで、だから似合っていて、さりげなく本当に嬉しそうに着こなしているという原点の姿に、目の覚める思いでした。

 今までのように、あでやかな着物姿の若い女性がずらっと並ぶ表彰式も豪華でしたが、五輪を四連覇した輝かしい経歴を持つ伊調さんが自分の意志で自分の着物を着ている、成人式や花火大会で、みんなが着るなら着るけれど、こんな時代になったら着物を着ることなんかできない、と思ってしまうなんて、なんてもったいないことかと、着物業に関わる私は反省してしまいました。でも何かを突き詰めて結果を出してきた人々は、やはり着物姿が違います。閉会式で、宝塚の方々が中振袖に袴を履いて、ショートカットでりりしく君が代を歌う姿を見ていて、厳しいレッスンに明け暮れながら芸道に精進している方の着物姿は世界に誇れると嬉しくなりました。

 あまりに密な閉会式を見ているのは怖くて、もう寝ることにしますが、今回のオリンピックは、人間性の優劣があからさまに画面に写し出されて、年齢も国籍も関係なく、精魂込めて自分の力を出し尽くすアスリートと、はち切れんばかりの体をスーツに押し込んで、利益を得ることに汲々としている人々が、危険なコロナ禍の中で日本に集ったことを、神様がどうご覧になっているのかと思うだけです。どうぞ皆さん無事にお国へ帰ることが出来ますように、ひたすら祈っています。