Social Funk!

徳永啓太さんのレポートから                                    

 医療福祉エンターテイメントをコンセプトに活動しているNPO法人Ubdobe代表の岡勇樹さんは、医療と福祉と音楽を掛け合わせたクラブイベント「SOCiAL FUNK!」を始め、子供から大人まで遊びながら医療福祉の仕事を体感できる「THE Six SENSE」、音楽xダンスx映像x照明xファッションに福祉的要素をミックスした、新感覚エンターテイメント「THE UNIVERSE」など、様々なイベントを企画・運営しています。3歳から8年間サンフランシスコで生活し、帰国後DJ・ドラム・ディジュリドウなどの音楽活動を始めた岡さんが21歳の時、毎日のように遊んでいた彼のもとに「入院します」と母から手紙が届き、治るものだろうと軽く考えていたら、実はガンで半年後には他界してしまったのです。とてつもなく大きな後悔が彼にのしかかってきて、多くの人が医療や福祉を知らないという状況を自分の為にも代えていかなければならないと思い、サラリーマンを辞め、「音楽療法」を学び、訪問介護や移動支援の仕事を始めました。29歳でNPO法人Ubdobeを設立し、現在は医療福祉系クラブイベントの企画、デジタルアート型リハビリテーションの開発、各種行政からのイベント制作やコンテンツデザインなどの受託事業を展開しています。スタッフの中には障害を持つ子供をもち、辛くなりがちなリハビリを楽しくするため、デジタルアート型リハに積極的に取り組んでいる人もいるし、2010年から始めた「SOCiAL FUNK!(ソーシャルファンク)」はクラブに行くような若者にも興味を持ってもらえるようにバンドやDJを呼び、クラブイベントに参加しながらライブの間にガンや障がいなど医療福祉のトークを挟み、少しでも情報を持ち帰ってもらえるものにしました。「知ることで一般の人の価値観が変わると思うし、障がいを持つ当事者もクラブに行くことで刺激を受ける。クラブで医療福祉の情報を発信したのは僕らが初めてだと思いますが、本質的に伝えたいことは昔から活動している障がい者団体と変わりません」岡さんは、自分自身が音楽とアートにめちゃくちゃ救われていると言い、人生で辛いことがあった時も、「このアーティストやばい!」とか、「今日のライブ楽しかった!」と思えたら生きて行けるし、また観たい、聴きたいと思うことが生き甲斐になるのです。そこで来れない理由や物理的な面があるなら、自分たちが準備や手伝いをすればいいし、音楽やアートの素晴らしさを伝える先にあらゆる人がいるのに、それが一部の人しか味わえないのは不公平だと思うから、どんな状況でもどんな障害があっても、それを伝えるようにしたい。          

 アメリカで育った彼は、隣の家の人が何処の国の人だかわからない環境にいて、多様性という言葉の意味がなく、むしろ多様でしかなかったのですが、でもどんな人種でも、どんな環境でも楽しんで生きられていればそれでいいし、一人で楽しめない何かがあるのであれば、隣の人や近くにいる人が手伝えばよいというのです。

 せんだって行われた十周年記念イベントでは、バンドマンがいて、DJがいて、京都でクラブイベントを主催している車椅子の兄弟がフロアを盛り上げ、それを見て子供たちも見様見真似で踊り始め、デジリハでエンジニアをしている子供たちが照明の演出をする、こんなに多様な人が一度に集まって楽しんでいる空間は見たことがない、まるで未来の姿を見ているようだったと徳永さんは書いています。これは音楽というツールが引き合わせた空間であり、多様性は目的ではなく結果である。スピーカーから発された音が人の体に吸収され、その音が体から放出されて会場に広がることによって空間がまろやかになるし、人がいればいるほどその空間の音質が良くなるという事実をみんなに体感してほしい。                                         「自分は何が好きで何を大切に想い何を求めて彷徨い続けるのか。本能的でいいんだ」岡さんのメッセージです。                      

 徳永さんのレポートを見ながら、若い世代が引きこもり模索し自分を見つめ続けてやっと出口が見つかる、なんて悠長なことを、今までの世の中は認めてくれず、親も考えられない事でした。進め、進め、と施したい英才教育。生後6か月でベビースイミングデビューし、リオオリンピックでも金メダルをとった萩野公介選手は引退したのは、初めて自分の意思に沿って考えて動いた結果でしょう。自分で考えて、自分で動くことが根底にないと、これからは生き抜いていけない。徳永さんが教えてくれる人々の生き様は自然で、あったかくて、自信に満ち溢れているのは、それまで受けた数多くの試練を乗り越えてきたあかしなのでしょう。私たちは、これからの不透明な世の中を誠実に生き抜いて行くための指針を皆に教えてもらっています。