ペニーレインのブルーベリーパン

 毎朝玄関を掃除し、花に水をやっていると前の電器屋のおじちゃんがお店を開けて、互いに挨拶をしながら「今日も頑張りましょう」と言葉を交わすのが日課になっています。亡くなられた奥様のお墓が信州に在るので、コロナ禍でもそっと車でお墓参りに出かけ、おみやげにキャベツやリンゴやお菓子など様々な美味しいおみやげを戴いていました。外国のゲストが来ていた頃は、珍しいお菓子などいただくとおじちゃんにおすそ分けして食べていただいたのですが、最近は戴くばかりで気が引けていたら、今日は那須にある有名なベーカリー”ペニーレイン”のブルーベリーパンを持ってきてくださいました。早速ネットで調べて、このお店がとても有名で、ブルーベリーが沢山練りこまれたこのパンも人気とのこと、相変わらずどこへも出られない私にとって本当に嬉しいプレゼントです。

 お子さんがいらっしゃらないので、奥様が亡くなってからは全くの独り暮らしで、お正月も一人でいてもしょうがないとたいてい旅行に出かけていたけれど、コロナ禍ではそれもできませんでしたが、やっとこうやって行けるようになってよかったと思いながら、羨ましい気持ちが多い私です。

 皆誰しも、胸に苦しさや辛さを抱いてそれぞれの人生を生きています。でも、毎日仕事をして、みんなと触れ合い、こうやって私たちのことも思いやってくださったり、愚痴を聞いて下さったり、一日終わってお店閉める時はまたあしたと声を掛け合って暮らせることが、とても嬉しいのです。おじちゃんは、お店閉めて、ご飯作って、晩酌しながら一日を終える時、今日という日を平和に過ごせたことを幸せだなと感じているのでしょう。でなければ、他人のことを思いやったりはできないですもの。

 私より長く電器屋さんのおじちゃんと付き合っている夫は、おじちゃんはちょっと変わり者だというのだけれど、私は全くそう感じないし、いつも心を開いて、自分の心を正直にさらけ出して、助けてもらっています。最近は気候の変わり目もあって、心が苦しい時が多いのですが、たとえ幸せな時があっても、幸せを自分の為だけに使わないで、幸せがやってきた時には、その幸せをみんなのために使って、みんなで幸せになることが自分の苦しみをなくすことかなと思うのです。逆境の後には必ず幸せが訪れるといいます。苦しかった分、幸せがちゃんと来る。試練は成長する時必ず訪れるものだと思うし、辛いことがあった自分を周りと比べるんじゃなくて、その辛さと戦える強さを貰えると思う。物事が自分の思い通りにならないことは、必ずしも悪い状況とは限らず、上手くいかなくてもじっと耐えて、時間をかけて、何かを熟成させていけばいいのでしょう。

 七五三の着物をうちに預けていた方が取りにいらして、お礼にシフォンケーキ頂きました。人生、いいことがある、ブルーベリーパンとシフォンケーキ、嬉しい限りです。