エアビーからのお便り

 義母の施設入居で忙しくしていたら、私のエアビーの予約表が11月で切れてしまっていて、ネットに掲載されていない事にも気付かないでいて、事務局のTAKAKOさんから、色々な提言を書いた丁寧なメールをいただいてしまいました。エアビーもコロナ感染で停止状態が続いた時もあり、オンライン体験が主流になっていました。感染が少し収まってからは、日本に住んでいる外国人が何人かいらしただけなのですが、最近は私は日本人の方に着物を着せたり、いろいろ斬新な写真を撮ってもらうことに興味がわき、エアビーはもうやめてしまおうかと思ったりしていました。特に義母の認知症状が進み、昼夜逆転が始まってからは、外国人の体験の事を考える余裕もなくていたのに、急に施設に入所が決まり、荷物や部屋の片付けも一段落した今、こうやってエアビーから連絡が来たのも巡り合わせなのでしょう。

 昨日英会話サークルの懇親会に出席した夫は、もうメンバーは4人になって、英語を話す機会もなくなったと淋しそうに言うので、何とか私のエアビーの体験を復活させて、夫を生き生きさせてあげなければと思い始めています。

 このところ、夫の仕事仲間だった方が体調が悪くなったり、病気をなさったりで、忘年会を久しぶりにやろうと連絡しても、メンバーが集まらなくなったとのこと、うちも義母が施設に入ったし、世の中は、というか、色々なことが変化している今、これまでと同じエアビーの体験はできません。世界中の皆が変わったと感じていることを、どうやって先に進むエネルギーに変えていけるか。今までのように、うちにいらしていただいて、着物を選び、着付けて写真を撮り、簡単な茶道体験をして、柴又へいき、お寺や参道のお店を見ながら、日本文化を味わうというコンセプトでいいのか。何の邪心もなく、ただ楽しめばよかったあの頃と、今の違いは何でしょう。これまでの世界が変わるであろう不安でしょうか。世界が反転していく時に立ち会っているという事実を認識して共有していくには、私の英語力の足りなさの前に、これからどう生きて行こうかという方向性を互いに持っているかということで、自分の世界観の構築、確立が必要だけれど、今の私にとっての世界観はこれまで来たゲスト達の中に在ると思っています。いろいろな国からいろいろな問題を抱えてやってた貴重なゲストとの触れ合いを、これから来るかもしれないゲストたちとのコミュニケーションを深めるためのツールとしてどうやって使って行けるか。私の中で欠けている歴史観というものは、ゲストと話すとき痛烈に感じることですが、このようにコロナ旋風が吹き荒れている時も、大事なことは時空をしっかり把握し考えることでしょう。遠い昔の過去の遺産もしっかり理解し、謙虚に学び、伝統の奥にあるもののパワーを受けとること。

 義母の部屋の膨大な衣類を片付けていると、ため息と疲労しかないのですが、送られてきた着物類たちには、これからの未来がある気がしてならないのです。使われていない半襟たち、それこそ羽織紐でも、いろいろな着物との組み合わせができるし、組みひもの技術にまで思いをはせることが出来る、こういう伝統や、その中に在るパワーを、私はこれからゲストに提示したリ語り合うことが出来るのでした。現実に絶望せず、何かの気持ち、人が今求めているものの形を互いに探り合っていくには、ゲストの存在はありがたいものなのです。美しいもの、美しい生き方、どんなに寒くても、どんなに暗くても、夜は明けて美しい日の出を今日も見ることが出来ます。

 自分の欲だけで生きて行く世界はもうない。共生していくこと、相手の社会を理解し、他者を常に尊重する姿勢を持つことが、自分をも救うことになるということを、私はこれからエアビーの体験の中で、感じていきたいし、着物を着る歓びや深みを分かち合いたいとより強く思っています。